松野さん家は、どこかおかしい。

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「松野さんとこの奥さん、亡くなったんですって。」












焼香の匂いが鼻をつく。




喪服を着た人々が、
貼り付けたような真顔で、私の周りを通り過ぎてゆく。





身体が重たい。


読経の声がすると共に、私の心は奥深くへと沈み込んでいった。







.








「____君のお母さんが、亡くなった。」





平日の、真昼の事だった。


5限目の現代文の授業中、担任に呼び出され、
職員室の隅っこで言われた第一声は、たったそれだった。








_______母が死んだ。








自ら命を絶ったそうだ。



私が学校に行っていて、
家に誰も居ない間。


天井に、紐を通して、
首を吊って。




私にも、誰にも何も言い残さず、


独りで。









通夜は身内内で厳かに行われた。




会った事も数少ない、大人の群衆。









不思議と、母が死んで心は痛まなかった。

涙は、枯れきっていた。








何をどうすれば良いのか、

どう感じれば良いのか、





分からない。









頭の中、全部空っぽになってた。

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