狂愛【伏黒恵】 (ページ4)

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私は満足して校庭に戻った。

次の日に通学路を歩いていたら、少し遠くに黒髪の特徴的な髪型をした男の子がいた。

私はランドセルを見て驚いた。

私が切って不格好になったランドセルは無かった。

代わりにピカピカの少し高級感に溢れたデザインになっていた。

ランドセルを2個持っていたのだろうか？

いや普通1人1個。2個なんて贅沢すぎる。

私は直接聞こうと、走って恵くんに横に行った。

『恵くん、おはよう。そのランドセル新しいね。どうしたの？』

恵くんは少し顔をこちらに向けるも、目線は私に向いていなかった。

少し話すぐらいの仲にはなったけど、目を合わせてくれたことは1度もない。

その度に私の心はチクチクと傷んだ。

「…買った」

『へぇー恵くんのパパとママってお金持ちなんだね!!』

「買ったの親じゃない」

『？…じゃあ誰が買ったの？』

「白髪の不審者」

“白髪の不審者に新しいランドセルを買ってもらった”

冷静に考えても理解できなかった。

「恵～ってお友達？」

『誰？』

後ろから恵くんを呼んで駆けてきたのは、私達より背の高い黒髪の女の子だった。

恵くんが説明してくれて理解した。

この女の子は私の一個上で恵くんの姉、津美紀というらしい。

恵くんは津美紀ちゃんと普通に目を合わせて話していた。

家族だから当たり前なんだ、そんなこと分かってる。

分かっているのに心底、羨ましくて憎らしい。

津美紀ちゃんは恵くんにとって悪じゃない。

だったら傷つけちゃいけない。

私は醜い感情を閉じ込めた。

「なんの話ししてたの？」

「白髪の不審者の話」

「こら、五条さんって言いなさい。ランドセルも買ってもらったんだから」

家族って、姉弟って…いいな。羨ましい。

家族愛が羨ましいんじゃない。

『私、先に行くね。ばいばい!!恵くん、津美紀ちゃん』

「…」

「またねー」

恵くんと繋がっているという縛りが羨ましい。