検索窓
今日:6 hit、昨日:4 hit、合計:4,384 hit

2 ページ3

餓鬼大将は、わんわん泣いては逃げていった。


子分らは腰を抜かし男の子と目が合えば、すぐに立ち上がって公園から出た。


私は上半身を起こして、目をぱちくりさせた。



「ん」



男の子は遠くに飛ばされていた私のランドセルを拾い、砂を落とせば私に差し出した。


私は、まだ理解が追いつかず受け取れずにいた。



「アンタのじゃねーの?」

『あ、私の……あ、ありがとう』

「ん」



男の子は私に背を向けて公園を出ようとしていた。



『待って!!……あの、名前』

「…伏黒恵。……アンタは?」

『私は、硪留(イソトマ)A。…ば、ばいばい!!』



私の名前を聞いて男の子は、背を向けて今度こそ公園から出た。


私は呆然としていた。


私の冷めきった心は、この瞬間から熱くなった。


伏黒恵。…恵……恵くん。


恵くんの顔を思い浮かべると熱くなる胸と顔。


私は、恵くんに恋をしたんだとすぐに気づいた。


それからは、毎日が楽しかった。


恵くんに直接会えなくても、頭に浮かべるだけで気持ちは昂って。


勿論、校内で目が合った時はもう死んでもいいと思うくらいに嬉しかった。


ただ一瞬目が合うだけで、ずっとは合わせてくれなかった。


父や同級生から暴力を受けてもどうでもよかったのに、恵くんと目が合わないぐらいで私は傷ついた。


私は恵くんの視界に入っていない。


入りたい……どうしても入りたいのに。


あの時、餓鬼大将から助けてくれた。


なら、恵くんにとって悪い存在になれば、私を見てくれるよね…?


それから私は、恵くんの鉛筆や筆箱、シューズを隠した。


けど恵くんは探すことはなく、次の日には新しい鉛筆や筆箱、シューズに変わっていた。


こんなレベルじゃ恵くんは、私を見ない。


もっと…もっともっと、酷いことをしなくちゃ。


体育の時間、トイレに行きたいと言って校舎に戻った。


私は、トイレではなく教室に向かった。


自分の教室ではなく隣の3-2、恵くんの教室。


うちの学校の体育は学年合同だから3年の教室には誰もいない。


向かう先は、恵くんの席。


廊下を通る度にチラチラと見ていたから席は覚えている。


そして机の横にあるランドセルの前にしゃがんだ。


ポケットからカッターを取り出し、カチカチと刃を出した。


そしてランドセルの表面に刃を入れた。


最低な事だけど、これで恵くんの視界に入れるならどうでもよかった。


恵くん以外の男は糞だ。


そして私も。

3→←1



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (11 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
8人がお気に入り
設定タグ:呪術廻戦 , 伏黒恵
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:みかん | 作成日時:2020年12月30日 17時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。