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耳を疑った。驚いた。嬉しかった。
後悔した。
恵くんに恋したことじゃない。
嫌がらせをしたことじゃない。
想いを伝えたことに。
やだなぁ…私ちゃんと覚悟決めてきたのに。
これじゃ揺らいじゃうよ。
『はは…恵くんは馬鹿だなぁ』
「……なんだよ」
『ねぇ、恵くん。
「…」
『君を呪ってもいいかな』
「………お前と一緒に居られるならそれでいい」
『ふふっ…無茶言わないでよ』
泣きそうなのを笑って誤魔化して彼の腕に固く結びつける。
もう十分だ。
言い残すこともやり残したこともない。
パチンッ____
指を鳴らしたと同時にまた地鳴りが響く。
恵くんは心底訳が分からない顔をした。
帳の効果を恵くんの侵入を拒むものに切り替える。
私たちの背後から先程と同じ数の呪霊が襲ってくる。
肩を噛まれる。足を噛まれる。首が食いちぎられそうだ。
『私に恋を教えてくれてありがとう。大好きだよ』
「おいッお前ッ!!!!」
私は恵くんを帳の外へ突き飛ばした。
首が飛び、意識を手放す瞬間。
パチンッ___
全てが爆ぜた。
私は最高に幸せだ。
綺麗だった。
彼の苦しむ顔も悲しそうな顔も。
でもやっぱり笑った顔が見たかった。
後悔はない。
彼は私
それならもう望むことはない。
いや違うな。
恵くんが私を想い続けてくれたら
私の呪いに溺れ続けてくれたら
もう思い残すことはない。
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作者名:みかん | 作成日時:2020年12月30日 17時