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私が小学生に上がる頃に両親は離婚し、私は父親に引き取られた。
父は変わらず優しかったし、学校にも通わせてくれた。
ただ、酒を飲むと別人のように暴力的な男になった。
殴られ蹴られの繰り返しで、暴力的な父を見て驚きを隠せなかった。
此奴は、父に似た誰かなんだと疑ったこともあった。
きっと今まで、母が酒の量を管理していたんだろう。
父の酒癖を知り、普段の父にさえ恐怖を覚えた。
父の頭は都合がいいようで、寝れば酔っていたことを忘れる。
母の管理のお陰で、父は自分が酒癖が悪いなんて知らない。
私も変に気遣って、怪我を見せないように長袖長ズボンを着て傷を隠した。
体育は傷が酷い時は休み、酷くない時は絆創膏や包帯で隠した。
父に問われた時は、寒いからとか日焼けしたくないからとか、分かりやすすぎる馬鹿な嘘をついた。
そんな分かりやすい嘘を鵜呑みにする父は、もっと馬鹿だった。
母は、父のこういうヘラヘラしたところにうんざりしたんだろうと子供ながらに考えた。
そんな生活に慣れてしまって2年半。
薄々みんなも気づき始めたのか、距離を置かれるようになった。
大方、親の言いつけだろう。
季節感の見られない服装に減らない怪我、当然のことかと呆れつつも深く気にする事はなかった。
面倒事が嫌いな私は、自分さえ良ければ他はどうでもよかった。
今思えば、本当に子供なのかと疑う程、冷静で大人な考えを持っていたなと笑ってしまう。
放課後、クラスの餓鬼大将とその子分に無理やり腕を引かれ公園に連れられた。
赤いランドセルは砂まみれにされ、私は此奴らの汚い靴で蹴られた。
私は声も上げず、泣きもしなかった。
それにイラついたんだろうか、蹴りは強くなった。
ドラマや漫画の世界なら、男の子が現れていじめっ子達を追い払い助けてくれるんだ。
冷めている私は、そんな夢を信じることはなく此奴らの気が済むまで蹴られ続けた。
「おい」
「あ、恵くん!!恵くんもこっち来てよ!!」
遠くの方から男の子の声がして蹴りが止み、全員の視線は男の子に移った。
餓鬼大将は、男の子を恵と呼んだ。
知らない子。
でも服に着けているネームは私と此奴らと一緒だった。
男の子は、こちらに足を進めた。
救世主かと一瞬思ったが、此奴らの仲間だろう。
どうやら、この世界の男は糞ばかりらしい。
ゴッ___
溜息をつこうとした瞬間、近くで鈍い音がした。
「つまんねぇ…」
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作者名:みかん | 作成日時:2020年12月30日 17時