【A3!】大好きなお兄ちゃんへ【三好一成】

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　その日の夜。夕食も食べず、お兄ちゃんは部屋でもくもくと作業をしていた。綴さんに頼まれた劇団のサイトのリニューアルとフライヤーのデザインを作成していた。

『お兄ちゃん。』
「あ、ごめんごめん。ずっとデザイン取り掛かってたから夕飯食べ損ねちゃったなー。」
『そうだと思って、おにぎり作ってきたよ。』

　私は、お兄ちゃんの作業机の上におにぎりの乗ったお皿を置いた。

「おー！ありがと。Aが作ってくれたん？」
『うん。お母さんとお父さんはまだ仕事から帰ってきてないから。ちょっと形が歪になっちゃったけど…。』

　料理もそこまで得意じゃない。学校の調理実習も基本皿洗い担当。けど、お兄ちゃんのことを思って作ると、自然と手が動く。

「マジで！絶対おいしいじゃん！っと、その前に写真撮ってインステにUP！『妹ちゃんに作ってもらったよん♪』」
『あはは…。別にそこまでしなくても…。』

　でもこうして、お兄ちゃんの役に立てたなら嬉しい。

「ん〜！マジうま！ちょーうまい！マジでありがと！」
『喜んでもらえたならよかった！あと、ぬいぐるみ買ってくれたお礼のつもりでもあるんだよ。』
「そんなお礼なんていいのに〜。」

　そういいながら、私の頭をわしゃわしゃ撫でるお兄ちゃん。その笑顔はとても輝いて見えた。

「っし。Aからの愛情たっぷりおにぎりでテンアゲ！カズナリミヨシ、残りの作業も頑張っちゃうよーん！」

　もう一度「ありがと。」と言い、再びパソコンと向き合い始める。

『…ねえ、お兄ちゃん。』
「ん？」
『お兄ちゃんがデザインしているところ、見ててもいいかな？』

　あまりこういう機会はないから、普段お兄ちゃんがどんなことをしているかが気になった。

「もち！いいんよん。まだ作成途中だけどねー。」

　そのパソコンの画面を見ると、様々な文字や数字がいっぱい並んでいて、今にも頭が痛くなりそうな構図だった。

『うう…。文字が多すぎて…。』
「はは、Aにはまだ難しいよねー。デザインとか勉強してるとさ、こういった複雑な構図ばっかなんだよねー。」

　話を聞く限りだと、本当に難しい勉強をしているんだなと理解した。けど、お兄ちゃんの表情はとても楽しそうで、本当にデザインや美術が好きってことが伝わってくる。

『私も、お兄ちゃんみたいに美大目指そうかな。』
「マジで！？オレ応援するよ！」

　ほんの少しだけ、夢が見つかった気がした。


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