【A3!】大好きなお兄ちゃんへ【三好一成】

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『…。』

(まさか、本当にお兄ちゃんと寝るなんて…。)

　寮のお風呂を借り、202号室に戻ってきたその後、私はお兄ちゃんに抱き枕されながらベッドに入っている。恥ずかしいけど、お兄ちゃんの嬉しそうに「Aあったか〜い。」と言ってくる表情には適わない。
　けど、私自身もお兄ちゃんと一緒に寝ることは嫌ではない。むしろ、少し嬉しい気もする。

『…お兄ちゃん。』
「ん？」
『やっぱり、なんでもない。』

　何か話そうとしても、言葉が出てこない。話したいことはたくさんあるはずなのに、お兄ちゃんがすぐ目の前にいると緊張してしまう。

「…最近、学校楽しい？」
『え？あ、うーん…。普通、かな？』
「そっか。すみーとは学校帰りに会ったんだっけ？」
『うん。最初は不審者かと思ったけど、すごく面白くて優しい人だったよ。』

　私から会話を持ち出せないのを察し、あえてお兄ちゃんから会話をしてくる。いつもこうして、コミュ障の私をそっとサポートしてくれる。

「ねえ。」
『？』
「我慢しなくていいっていつも言ってるっしょ？」

　『何が？』と言いかけたが、その質問の意味はすぐわかった。

「Aはすぐ顔にでるから。」
『…っ。』

　目元には、大粒の涙が溜まっていた。

『あ、あれ…。なんでだろう…。どうして…涙が…。』

　その涙の意味を理解できない私は、必死で目を擦り涙を拭く。けれども、涙は止まるどころかどんどん流れ出てくる。

「A。ごめんね。」

　そういうと、お兄ちゃんは私を強く抱きしめる。

『え…どうしてお兄ちゃんが謝るの…？悪いのは泣いてる私なのに…。』
「それは、愛しい妹ちゃんに寂しい思いをさせてまで泣かせるお兄ちゃんが悪かったから。」

　真剣な表情でお兄ちゃんは言う。

「本当は、オレが家からいなくなるとAが寂しがることは知ってた。でも、無理してまで応援してくれるAに応えるためにここにきたんだよね。でも、結果的に泣かせちゃった。オレ、お兄ちゃん失格だよね。」

　初めてお兄ちゃんの思いを聞いた。ちゃんと、私のことを考えてくれていたんだ…。

「だから、今日だけでいいから、寂しい思いをさせたお詫びに一緒に寝ようって誘ったん。本当は、オレのほうが寂しかったのかもしれないけど。」
『…お兄ちゃん…ありがとう…。』
「こちらこそ。A、大好きだよ。」


　私も、大好き…。

　そっとお兄ちゃんに抱き着き、お互いに「おやすみ」といい眠りについた。


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