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「 えり、ただいま 」
「 おかえりパパ！ 」
妻が亡くなって五年
娘に全てを尽くす為に会社を辞めて、家から近いコンビニに入った
元々人員不足があり、約三年程で店長へとなれた俺
娘の為に生活費を稼いで、娘の為に学費を稼いで
娘の為に将来のお金を貯める
“ ママ “ という存在が大き過ぎたから
悲しみだって比例して大きかった。
それを埋めるのはまず無理だと確信はしている
だけど、ずっと悲しんだまま放置していても何も変わらない
その為にずっと頑張ってきた。
「 お勉強進んだ？ 」
「 うん！ドリル終わったよ！ 」
この子の笑顔が見れればそれで良かったのかもしれない。
ビニール袋いっぱいに詰めた食材達を広げ
使わない食材を冷凍庫や冷蔵庫に入れる
チラッとリビングを見ると、真剣にアニメを見る娘の姿
何処と無く伸びた娘の髪
そのせいなのか、何故か彼に見えてしまう
「 … たつや、か 」
あの時見えたトーク欄
何も会話はしていなかったけれど
相手の名前は “ たつや “ だった
彼は色んな人間と交友関係を築く人でも無ければ
連絡先は滅多に教えない
だけど、新規の友達がいる
深夜から朝までバイトをして
朝から夕方まで寝て
それ以外はテレビを見てる
なんて言っていた彼だから
範囲は絞られる
まぁ、出会い系サイトを使って家に呼んでたりしてたら
推測は難しいけど
俺の中ではもう誰かは決まってる
「 あ、お客様名刺落としましたよ！ 」
「 え、うっそ … うわほんとじゃん！すみません！ありがとうございます！ 」
「 いいえ、ありがとうございました！ 」
朝、いつもよりも人が多くてレジの混み合いを
新聞を飾りながら見ていた時
駆け足で出口の方に寄ってくる男性が名刺を落とした
直ぐに俺は駆け付けて名刺を渡し、また戻る
「 パパ！今日はハンバーグが良いな！ 」
深澤辰哉
それが彼の名前だった
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作者名：渚 | 作成日時：2022年4月29日 21時
