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「 … 渡辺くん 」
あの後、家の中に入り膝から崩れ落ちた俺
昨日は何とも頭をよく使う一日だった。
俺の事が好きな阿部さん
彼と同級生の岩本照
ご飯に誘ってくる元彼の向井康二
おとぎ話の中でもこんな一斉に登場人物を詰めてこない
それに、本当に昨日は怖かった
「 起業家というならば少なからず頭は良いはずで
コミュニケーション能力も高く語彙力も高い
自分自身の体の状態だって機械なんか使わずに感じて
分かる、という人が多い 」
どこかの本でそんなことが書いてあった。
岩本はその特徴にぴったりと当てはまっている
それに、彼に向ける眼差し
ウットリとしていた、あの時の様に
ナイフのように尖った視線ではなくて
どこか、恋してるかのような。
「 渡辺くん 」
「 あ、はいっ … ぁ 」
「 あ、えっと、ごめんね昨日
えりが何か、変な事言っちゃったみたいでさ 」
「 あぁいやべつに、あの年頃の子には良くある事ですよね
少女漫画とか読んで、そういう感情に浸る事 」
レジの中にお金を見詰めて考えていると
隣に資料を抱き締めながら、困り眉で俺を呼ぶ阿部がいた
昨日の事、気にしてるんだろう。
正直俺だって頭の中央にまだある
あれがただのえっちゃんの妄想だとしたら直ぐに済む話
だけども何と言うか、妄想の話を簡単に「本当」という
言葉に置き換えて話すものなのだろうか
あんな小さい子が。
「 そうだよね、ココ最近テレビでも良く恋愛アニメとか
ドラマとかやってて夢中で見てるし、多分その影響かな 」
ニコッと笑って楽しそうに自分の子供の話をする阿部さん
恋愛的な意味じゃなく、人間的に俺は阿部さんが好きだ
優しくて不機嫌な顔をせず、いつも笑っている
そんな阿部さんが “ 人間的 “ に好き。
きっとあれは違う。
「 ココ最近、あのお客さん見かけないね 」
「 あのお客さんって? 」
「 ほら、いつも朝に来る 」
「 あぁ … 忙しいんじゃないですかね 」
そのお客さんは今
「 うわっやっべ!遅刻だ! 」
きっと会社に猛ダッシュで向かっているんだろう。
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作者名:渚 | 作成日時:2022年4月29日 21時