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「 あれ？照？」
午後からは向井も平然と仕事をこなしていて
特にこれといって変な所は無かった
いつも飲みに誘ってくる向井でも今日は
「 少し思い出にひたってくるわ 」
なんて、くさい事を言って定時になれば直ぐに帰るし
コンビニに寄っても今日は彼はいなかった
連絡は続いてるから別に不審には思わないし
心配にもならないけど
何だか今日は一人ぼっちな気分になりやすい。
そんな中、マンションの入口の壁に寄りかかって
じっと腕を組んで誰かを待つ人影があった
よくよく見てみると
「 お、ふっか 」
高校の時の同級生
岩本照だ。
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「 相変わらず変わってねーな、その顔もそのデカさも 」
「 お前も相変わらず顔の弄りは治まってねーな
てか1か月前に海外に行ったんじゃねーの？ 」
「 あー、まぁ、それは中で話そうぜ？ 」
片手には俺の好きなケーキ屋の箱を持っていて
それをじっと見ていると
ニヤッと岩本は笑った
この笑顔もまた変わってない
「 あれ、お前匂い変えた？ 」
「 ん？あー、まぁね 」
家に上がれば直ぐに口を開いてそう言う
確かこの匂い、彼の部屋に置いてあったアロマの匂い
あの後秘密でネット通販で買ったんだ
もう、慣れてきちゃったな。
岩本は俺の部屋を見渡せばソファに座ってケーキを
机の上に置いた
一息つけば煙草の箱を取り出し
俺に一言も無しにライターを付けてシガレットに火を灯す
「 お前なぁ、ここ俺ん家 」
「 ふっかの家はほぼ俺ん家だろ？ 」
「 ジャイアンも変わってねーな、ったく 」
「 ふふ、そういや彼女と別れたんだって？
あっちの浮気だってな 」
「 え、あぁ、まぁ 」
煙を出しながらリビングを歩き回るから
急いで換気扇を回して岩本を追いかける
脚の長さがまず違うからか、数メートルだけでも
少し疲れる
年かよ
そんな岩本に追いつけば俺はシガレットを取って
指で無理矢理にでも火を消した
まるで今日、向井のあの手の様に。
「 必死 」
「 火災報知器鳴ったらどーすんだよ！ 」
「 水道代節約だろ 」
「 お前なぁ … 」
元は大人しくて静かな人間だったのに
いつからだろ、こんなふうに変わったのは。
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作者名：渚 | 作成日時：2022年4月29日 21時
