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しばらく無言が続き
諦めて俺が切ろうとした時
「 最近、どうなん 」
と向井が言葉を出す
深い意味も無ければ、わざとらしい聞き方で
俺は思わず吹き出し
久しぶりに笑った。
彼の前でも緊張してずっと固まっていた俺だから
笑いと共に涙が溢れてきそうになる
「 こんな朝にかかって来るとは思わんかったし …
それにまず掛けてこうへんかと思ったから … 」
「 ごめんごめん、俺も最初は掛けちゃダメだと思ったけど
気付いたら勝手に掛けててさ 」
これはまだ
浮気に入らない、絶対。
この電話で全てを終わらせればいい
それだけの事さ。
「 相変わらずしょたくんは好きにさせる事が上手いんやな 」
昔から 「 思わせぶり 」 を良くする俺
自覚は最初の時はなかったけど
相手が俺から去る前には必ずこの言葉を残して去っていった
全員俺に呆れて
まるで沢山年月をかけて古びたぬいぐるみの様に
遊ばなくなり、見もしなくなり、最後には
「 いらない 」
と言われて一生を終える。
そのものだった。
そんな俺をずっと支えていたのは向井、ただ1人だけ
でももう、九年前。
「 あ、この前多分店員さんしてたのしょたくんよな！
あん時ごめんな、小銭投げてへんかった？
あ、当たってたらほんまごめん！！ 」
勝手に話し出して
勝手に進めて
勝手に謝る
変わってないのは、お前もか
「 なんも気にしてない、急に取引 ... なんか用事あったんでしょ 」
「 ん？あ、そう！そうなんよ！
取引先の人に急に呼ばれてもう大変よ … 」
俺の口は勝手に彼の存在を隠した
どうしてかは自分自身まだわかってない
だけど何故か彼という存在と俺が関わりを持ってなくて
向井にとってはあの時限りのお客さんだったという
思いを持って欲しくて
もしかしたら隠したのかもしれない
別に隠しても問題は無い
今で終わりだ。
「 なあしょたくん、久しぶりにコンビニじゃなくて
別の場 .. 「 悪いけど、俺恋人がいるんだ 」
彼という存在は出さずに
“ 恋人 “ という存在を出した俺
向井はそれを聞いて
「 そう、やんな 」
と小声で呟いた
俺はまだ濡れている髪の毛を握って
涙を堪える。
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作者名：渚 | 作成日時：2022年4月29日 21時
