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「 … かけ、… はぁ … 」
あの後じっと紙を見詰めて考えていた俺
だが駆け込む様に店内に入ってきた客を相手に
ズボンのポケットに入れて
そのまま仕事中忘れていた
深夜は以外にも忙しくて
誰かの事を考える暇なんてあまりない。
早朝5時
俺の勤務も終わり
朝早くから駅へと向かう通勤の人や通学中の学生を
横目に急いで家に帰る
風呂に入ってとっとと寝よう
朝日を浴びたらまた頭が痛くなる
そんなのごめんだ。
と思いながら着いた家
脱衣所に向かう途中に上着は脱ぎ捨てて
着いた瞬間にズボンを脱ぐ
ポロッと何かが落ちて、足で踏めばグシャッと紙が
丸々音がした
半開きの口で髪を拾えば、また暗い顔をする
かけてもいいのか、だめなのか
俺自身が決めなくてはいけないこと
苦手なんだよな、自分で何かを決めるって。
俺は一度紙を置いて、浴室へと入る
いつもなら
気持ちいいな
なんて思う風呂も、居心地が悪く感じる
「 090 … 」
約10分が経って、髪をタオルで拭きながら脱衣所から出て
腰にタオルを巻く
まだこんなに朝早い時間だし
今日は月曜だし
出ない、と思う。
俺は留守電くらい入れてやろう
という感覚で電話番号を打ち、電話をかけた
:
「 もしもし、向井です 」
:
3コール目
まだ心臓が鳴り止まない時に、向井は出た
こんな朝早くから起きて何してるんだと思うけど
聞く気にはならない
俺は何も言わずに、ただ濡れている髪に手をかける
濡れているから余計に長さが目立って
あの時を思い出す。
「 しょたくん、よな 」
そんな俺に向井は名前を出す
少し間を開けて、俺は頷くと同時に
「 うん 」
とだけ答えて相手の返答を待ち望んだ
そりゃあ、こんな朝早くから電話かける奴なんて
深夜電話番号を受け取った俺しかいないだろう
「 その、あん時は迷惑かけてごめん、久しぶり過ぎて気が動 .. 「 良いから、別に 」
俺自身、何も悪いことしてないのに謝られる
のが苦手なんじゃなくて
きっと謝罪されるのが苦手なんだろう
俺は向井の言葉を遮り、冷たく言い放つ
子供のまんまだ、俺。
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作者名：渚 | 作成日時：2022年4月29日 21時
