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「 ……… 」
「 寝ろって言われても寝れないか 」
シーンと静まり返る車内
眠たいのは山々だけど、流石にこんなに
… うわ、肩当たってるって
タクシーに乗るなんて、小さい頃親と動物園に
行った時以来
あの時は小さくて、タクシーの中大きいなとしか思ってなかったのに
成人男性が二人となると、少し狭く感じる
「 まあ、でも大丈夫だよ 」
この時間が止まればいいなんて思えば
止まらないでとも思う
胸がはち切れそうだよ。
真面目に。
( お二人さん、カップル？ )
信号が赤になり、タクシーが止まった瞬間
運転手が問い掛けてきた
「 いやいや友人ですよ 」
少し間があったが、深澤が笑いながら答える
( なんだそうだったか、さっき乗ったお客さん
2人組だったんだけどね、男性同士のカップルでさぁ
この頃増えてるじゃないですか、だからお二人もかと )
そうだったらどれ程良かったか。
確かに今世間ではLGBTQを 差別しない という方向性が主流
まぁ俺の意見からすれば
“ 差別しない “
という考えが出てくる時点で脳内で分けられてるんだと思っているが
それも致し方がない
男と女
これが世の普通だったんだから
「 僕ら似合いますかね 」
少しながら俯いていると、深澤が運転手に問い掛けた
俺は驚いて顔を上げて深澤を見る
運転手をじっと見ているその横顔
また綺麗だと思った。
( お似合いですよ、とっても )
信号が青になると同時に返答が来る
満足気に 「 ありがとうございます 」 と言った深澤
前のめりになっていた身体を戻した時
手が偶然にも当たったが
そのまま俺の手の上に深澤は手を重ね
何も言わぬまま窓の外を見る
こうやって男を落としてきたのかな
ずるいよ
タクシーが映画館前に着き
深澤が電子マネーで支払えばドアが開いた
後で返さなきゃ
なんて思いながらタクシーから降りようとした時
何故か懐かしい匂いが俺の身体にまとわりついた
懐かしいと言うより、消したい匂いが。
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作者名：渚 | 作成日時：2022年4月29日 21時
