おかえり。 (ページ48)

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「康二いねぇのかよー、せっかく土産貰って

一緒に食おうと思ったのに」

昨夜、二人が帰った後も一人で余韻に浸りながら

飲み続けていた俺

案の定寝たのは朝方の4時

勿論遅刻をして上司には怒られた

だが、取引先へは遅刻せずに行く事が出来、無事に成立

祝いの品として高級バームクーヘンを貰い

今現在、紙袋を揺らしながら会社へと帰っている所だ

「ったく、取引成立の瞬間に立ち会えない康二は

残念なや ... あれ、照からじゃん」

小言を言いながら歩いてる際、ズボンのポケットの中に

入っている携帯がブルブル鳴り出し

見てみると岩本から着信が入っていた

「はーい、どーしたのー」

「昨日飲み過ぎてたから体調悪くなってないかなって

今外？仕事中？」

「取引先からの帰り、まあ仕事はほぼ片付いたようなもんだよ

てかお前こそ仕事は？」

「仕事しながら電話掛けてんの、こんな心配してくれんの

今のお前の中だと俺くらいだろ」

「 ……… さぁなー？他にもいるかもよ」

彼が心配してくれるとは思ってたけど

正直メッセージがひとつも無いのは寂しい

あの夜の事、あまりおぼえてはないけど

「どうして俺が彼女に浮気されて別れたって、知ってんの？」

との質問の返答が曖昧にされたのは覚えてる

確か、「勘だよ」とかで言われたっけ

まあ、昔から異様に察しが良い岩本だったから

別に不自然では無かったけれども。

「ふーん、ねえふっか、今日夜飯食おうよ」

「昨日食ったじゃーん」

「特に予定ないんだろ、今日の18時に迎えに行くから」

勝手に時間決めてすぐに電話を切る癖

どっかの誰かさんに似てんな

彼の事を思い出してニヤッと口角を上げた俺は

ゴソゴソとポケットの中に携帯を詰め込んで

手を入れたまま歩き続ける

今日は何を食おうか

あいつの事だから次は中華系が来そうだな

小籠包食べたいんだよな

俺の頭の中は今幸せでいっぱい

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今が来るまでは。

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「しょたくん待って！」

「え、康二？」

洒落たイタリアンの店の前を通り掛かったその瞬間

ドアが壁にぶつかる音がして振り向いた

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そこには

シンプルな服装をした彼が遠くに走ってく姿と

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向井康二の姿。

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