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悲しい話もしてなければ
落ち込む話もしていない
だけど向井は泣き始めた
煙草を見詰めて、ぐっと堪えた後に
「 ごめんふっかさん、お待たせ 」
「 ん、流石に目元赤いと言われるしな 」
「 そやね 」
誰も使わない男子トイレで目元を冷えた水で冷やし
外で待っていた俺の元に掛けよれば
二人してオフィスへと戻る
なんで泣いたの
と聞きたいけど、今こうして笑顔になってる向井を見てると
また後でにしよう
となる。
向井にはもう9年間彼女がいないと聞くが
その最後に付き合っていた彼女と何があったのか
相当メンヘラな女性なのかとか
束縛強めの人だったのかなとか
勝手に俺の中で想像していると、向井が口を開く
「 忘れ、られないん、よね！その、元 … カノがさ！ 」
所々刻み刻みに言葉を発する向井を横目に
俺は携帯を取り出して、時間を見る
もう少しで昼休憩が終わる時間
そんな時間にこんなシリアスな話を持ちかけるなよ
なんて思うけど
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実際、俺もその節がある。
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「 どんな人だったの 」
「 んー、とにかくハッキリ物事言って、少しツンデレで
後はずーーっと俺の事愛してくれてたんよ 」
“ ずーーっと “ か。
彼女、俺の事それぐらい愛してくれてたかな
あの別れを告げられた後
もう会ってはないし、連絡も取ってないしで
愛していましたか？なんて聞けない
正直、聞いた所で？、だし。
「 良い人じゃん、どっちから振ったの 」
「 俺や 」
「 … え 」
そのペースで行くと、彼女側が何か暴れて
「別れる！」と言ったから別れたのかと思ったら
向井からだったとは。
「 え、てなんやねん、この左耳な
その元カノが耳引っ張たいて聴力低くしたんよ 」
笑いながら耳を触って言うも
その笑顔は誰から見ても悲しそうだった
「 暴力を振られたから別れたの？ 」
「 んーや、俺その人ん事になると何でも許しちゃうから、それでは別れへん 」
「 見事なばかっぷり 」
「 言っとけ言っとけ、まぁ、別れた方が二人とも
幸せになるんやろーなーって思って、別れたんよ 」
別れの選択が二人の幸せ
彼女も、そう考えてたのかな
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作者名：渚 | 作成日時：2022年4月29日 21時
