4 ページ4
ここまで来れば、宮舘と渡辺は阿部がおかしくなっていることに気づいていた。
二人は何度も阿部を止めようとした。しかし、もう遅かった。
dt「お前……流石にそこまでやるのは」
ab「え? そう?」
nb「……」
ab「何その顔。俺の言う事聞けないの?」
nb「っ……」
ab「……あ、良い事考えた。翔太が言う事聞かないなら舘さん虐めちゃうよ?」
nb「……!?」
dt「は、お前何言ってんの……?」
ab「ねえ、言う事聞いてくれるよね?」
dt「……翔太、言う事なんて聞かなくて良いよ」
ab「舘さん、邪魔するなら翔太を酷い目に遭わせるよ」
dt「……お前、」
ab「ねえ、協力してくれるよね? ね?」
dt「っ……」
nb「……」
ab「ふはっ、それでいいんだよ」
阿部は彼等の絆が深い事を誰よりも知っていた。だからこそその絆を利用し、二人を手懐けた。
A-chipを併用し始めた事で阿部の思考はさらに歪み、ついには凶行に及んだ。
阿部たちが隠れて研究を続けるのには限界があった。阿部の両親を始め、周りには邪魔な人間が山ほどいた。
その邪魔な人間を、阿部は自らの手で全員消した。時を止め、全員の首を切り、死体を闇に葬り去った。
そうして阿部は組織の頂点に立ち、取り憑かれたようにA-chipについての研究を進めたのである。
阿部を崇拝するようになった人間たちが、この組織をUtopiaなどと呼ぶようになったのはこの頃からだったか。
A-chipのconfusionを成功させるために、阿部は誰彼構わずconfusionを試すようになった。
A-chipと適合しそうな人間を見つけては誘拐し、confusionを試した。
ほとんどの人間は亡くなった。A-chipに耐えられる人間などそういなかった。その度に再びA-chipを取り出し、死体を葬り、別の人間を攫い、実験を繰り返した。
見ていられなくなった宮舘は、自分にconfusionを試すように阿部に提案した。
宮舘は阿部の命令で元々「Fire」を使っていた。
A-chipをすでに利用している人間がconfusionをしたらどうなるのか。興味を抱いた阿部は、宮舘の申し入れを受け入れた。
「Mind」を選んだのは、声を失った渡辺の心情を理解してやれたら、ただそう思ったからである。
宮舘のconfusionは成功した。生じた副作用は痛覚の鈍化だった。
日を追うごとに副作用は悪化し、今では痛覚を完全に失っている。実のところ、最近では温度感覚も怪しい。
こうしてA-chipを二つ手に入れた宮舘は、阿部の指示で悪役よろしく第零班の前に時々姿を現すようになったのである。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1654人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ふわふわ(プロフ) - 完結おめでとうございます！最後の最後まで展開が読めなくて魅入ってしまいました。読んだ後は言い表せない気持ちになって…終わってしまうのは寂しいですが、この作品に出会えて良かったです。 (2020年7月5日 10時) (
レス) id: f520444a12 (このIDを非表示/違反報告)
猫茶(プロフ) - 最後まで面白かったです。完結お疲れ様でした。ものすごく楽しい時間をありがとうございます。今後の作品も楽しみにしています。 (2020年6月16日 0時) (レス) id: 49683351d4 (このIDを非表示/違反報告)
87(プロフ) - 完結お疲れ様でした！本当に大好きな作品で、終わって欲しくないとすら思っていました、、なんだかすごく大きな問いを私たち自身にも投げかけられたような気分です。楽しませていただき、本当にありがとうございました！今後の作品も楽しみにしています。 (2020年6月14日 17時) (レス) id: 14f6dae557 (このIDを非表示/違反報告)
あい(プロフ) - 完結お疲れ様でした！めちゃめちゃ面白かったです！毎日楽しみにしてました！ありがとうございました！ (2020年6月14日 14時) (レス) id: c32ac9b701 (このIDを非表示/違反報告)
ゆめ - 完結お疲れ様です!!怜さんの作品の更新を毎日楽しみにしてました!!またいつかこういう能力系などのすごい作品が作られるのを待っています!! (2020年6月14日 13時) (レス) id: f176b79d77 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：怜
| 作成日時：2020年6月5日 21時
