ムカシバナシ/1 ページ1
阿部はchipを開発した研究者一族の息子である。
そのため幼い頃から勉学に励み、高校を卒業してからは彼もchipの研究に携わった。
最初は希望を持ち、純粋な気持ちで研究に励んだ。
しかし、彼に対する周囲のプレッシャーは軽いものでは無かった。
新たな研究成果を出せ。一族の息子だろ。そんな圧力が阿部を日に日に蝕んでいった。
周りを認めさせる研究成果を出さなければならない。追い詰められた結果、阿部が研究テーマとして選択したのはconfusionであった。
危険なのは分かっている。しかしconfusionが成功すれば、chipの能力をもっと引き出せる。周囲の期待に応えられる。そう思った。
宮舘と渡辺は幼馴染みであり、阿部の旧友であり、研究仲間でもあった。
周囲の圧力に追い詰められていく阿部を、二人はずっと近くで見ていた。そのため、阿部が危険なテーマに手を出そうとしているのを分かっていて、止める事が出来なかった。
阿部は考えに考え抜いて、何処にどのようにchipを埋め込めばいいか、綿密に計算し尽くした。
あとは実行するだけ。では誰に実行するか。そこで名乗りを上げたのが渡辺だった。
nb「……いいよ、俺で」
ab「でも、失敗したら……」
nb「だから俺で良いって言ってんじゃん。他の無関係な人が大変な事になるくらいなら」
dt「翔太、」
nb「だって俺そんなに研究できる訳でも無いし。実験台になって協力できるならそうするよ」
dt「でも、」
nb「良いんだって」
ab「っ……本当に良いの」
nb「良い。お前が失敗する訳無いだろ」
渡辺の固い意思は宮舘でも変えられず、結局阿部は押され負けて渡辺にconfusionを施したのである。「Memory」は元々渡辺が使っていたchipだった。
結果、confusionは成功した。これで渡辺がconfusionに成功した初めての被験者となった。
しかし、その日から渡辺の声は出にくくなった。confusion以外に原因は考えられなかった。
ab「ごめん翔太、」
nb「っ……ぃや、」
ab「でも!」
dt「阿部一人のせいじゃない、俺だって」
nb「……ち、が……」
ab「……ごめん、本当にごめん」
阿部は渡辺の副作用に酷く心を痛め、confusionの研究をやめようとした。でも渡辺がそれを許さなかった。
自分の犠牲を気に病むなら、それを糧に成果を出せ。渡辺自身がそう励ましたので、阿部はconfusionの研究を続けた。
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ふわふわ(プロフ) - 完結おめでとうございます！最後の最後まで展開が読めなくて魅入ってしまいました。読んだ後は言い表せない気持ちになって…終わってしまうのは寂しいですが、この作品に出会えて良かったです。 (2020年7月5日 10時) (
レス) id: f520444a12 (このIDを非表示/違反報告)
猫茶(プロフ) - 最後まで面白かったです。完結お疲れ様でした。ものすごく楽しい時間をありがとうございます。今後の作品も楽しみにしています。 (2020年6月16日 0時) (レス) id: 49683351d4 (このIDを非表示/違反報告)
87(プロフ) - 完結お疲れ様でした！本当に大好きな作品で、終わって欲しくないとすら思っていました、、なんだかすごく大きな問いを私たち自身にも投げかけられたような気分です。楽しませていただき、本当にありがとうございました！今後の作品も楽しみにしています。 (2020年6月14日 17時) (レス) id: 14f6dae557 (このIDを非表示/違反報告)
あい(プロフ) - 完結お疲れ様でした！めちゃめちゃ面白かったです！毎日楽しみにしてました！ありがとうございました！ (2020年6月14日 14時) (レス) id: c32ac9b701 (このIDを非表示/違反報告)
ゆめ - 完結お疲れ様です!!怜さんの作品の更新を毎日楽しみにしてました!!またいつかこういう能力系などのすごい作品が作られるのを待っています!! (2020年6月14日 13時) (レス) id: f176b79d77 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：怜
| 作成日時：2020年6月5日 21時
