バツゲーム/1 ページ21
その夜、渡辺は能力を使って宮舘と電話をした。
nb『……ばれたよ』
dt《……そう》
目黒の記憶を朧気に残しておくように指示したのは宮舘だった。
ボスには目黒の記憶を消しておくとは伝えたが、
そうして目黒に話をさせ、ラウールに渡辺の裏切りを気づかせる。それが彼等の立てた作戦だった。思ったよりも早く事が進んだが。
nb『ねえ、本当にこれで良かったの』
dt《いいんだよ、たぶん》
何故そんなことをさせたのか。答えは、ラウールにボスの正体を暴かせるためである。
いつかボスを改心させたいなどと考えた事もあったが、自分たちには無理だ、と言う結論に達した。彼等は近い関係になりすぎた。
かといってボスを殺すことはしたくない。ならばどうするか。そこで出した案が、ラウールにボスに辿り着かせる、と言うものだった。
頭が切れる上に「Zero」を持つラウールなら、正体を暴いてボスを止められると思った。純粋な彼なら、ボスを改心させられると思った。
16歳相手に期待しすぎなのかも知れない。最善の方法は他にあるかも知れない。それでも宮舘と渡辺はラウールに賭けた。もうそれしか思いつかなかった。
その手始めに、第零班の中にいる裏切り者をあぶり出させたのである。それが一番リスクが低い方法だと思った。
nb『……早く逃げろ』
dt《逃げたって無駄だよ》
nb『なんでだよ、』
dt《どうせ見つかるでしょ》
nb『そうかもしれないけど!!』
ボスは、渡辺を服従させるために宮舘を、宮舘を服従させるために渡辺を人質に取っていた。
二人が互いの事を誰より大切にしているからこそ、ボスは非情な手段に出た。
ボスは二人の事を監視している。渡辺がラウールに気づかれた事をもう知っていてもおかしくない。
その場合、危険が及ぶのは宮舘である。
本当は直接ボスに導く方法もあった。でも迂闊にそんな事をすれば、今のボスは何をしでかすか分からない。第零班はもちろん、命を奪われずに済むはずの人々が犠牲になるかもしれない。
だからラウールにだけ、遠回しに少しずつボスに近づかせる。できるだけ犠牲者を減らすためにはこうするしか思いつかなかった。
dt《大丈夫、腹は括ってる》
nb『お願いだから逃げてよ涼太!!』
誰かが倒れるような音が聞こえた。
その後聞こえた一番聞きたくなかった声に、渡辺は凍り付いた。
《……もう手遅れだよ?》
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1320人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ネイジュ・ピエール(プロフ) - え？あ？え？あ？え？？え？？？自担・・・え？？？(混乱)いや・・・すごいです。(語彙力) (2020年6月2日 14時) (
レス) id: dc089a6cc9 (このIDを非表示/違反報告)
怜(プロフ) - 祐莉さん» コメントありがとうございます! これから細かい種明かしをする(はず)なので楽しみにしていてください! (2020年6月2日 10時) (レス) id: 5d0eab8cc9 (このIDを非表示/違反報告)
祐莉 - 楽しく読ませてもらってます！ ついにボスが明かされましたが、ひそかにしていた予想が当たり過ぎてびっくりしてます! (2020年6月1日 21時) (レス) id: ea9cf53e18 (このIDを非表示/違反報告)
祐莉 - こちらこそコメントありがとうございます！もちろん明かされる日まで心に留めます！実は、前回のコメントもコメント欄見てる人も多いから考察人物とかはあえてぼかしました! 身体に気をつけて!これからも応援してます！ (2020年5月24日 23時) (レス) id: ea9cf53e18 (このIDを非表示/違反報告)
怜(プロフ) - 祐莉さん» コメントありがとうございます! 2人ってどの2人だ? あ、言わないでくださいね、心の中に止めておいてください笑 これからもよろしくお願いいたします! (2020年5月24日 15時) (レス) id: 5d0eab8cc9 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：怜
| 作成日時：2020年5月23日 9時
