格好いいアズールくんは獣で怪物！ (ページ10)

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一人で寝られない

何を稚魚のような戯言を言っているのかと
僕はもう一度、彼を見つめる

冗談であるならばここは笑うところだが
彼は《この話は本当の事》というように

眉間にシワを寄せた

笑わないと約束したんだ

信用してもらえるように
今回は約束を果たそう

「それはそれは……原因はわかるんですか……？」

「………わかんない、突然、寝れなくて……」

「それでいつも、イデアさんの部屋で寝ていると………？」

「あ、いや……それは昼だけで
　夜はちゃんと寝てるよ」

矛盾が生まれた気がするが

Aさんはまだ話している途中だと
口を開ける

「に、人形と一緒に寝てるの。お気に入りの人形をこの前、街で見つけたから……」

そういえば

ついこの前に街へと視察へ向かわせた
それはAさんだったんだ

思えば、あの時の彼とはただの寮の仲間とだけ

それだけの面識しかなかったのに

今こうして惹かれるのは
やはり不思議な物だなと

ちょっと面白く思える

「あの時の事ですか………って、視察だけをお願いしたはずでは……？」

「えぇ、でもあの時アズールくんは
　早く終われば好きなようにしてって………」

「………言ってましたね、すみません」

「アズールくんでも忘れることなんてあるんだね」

「うるさいですよ」

寮長なのに

そう馬鹿にされた気がした

他の寮生にそう言われたら
きっと僕は怒っていたのだろう

だけれど

Aさんに馬鹿にされても、煽られても
話しかけてくれて嬉しいと思った

………決してMとかではない

彼が僕の事について言っていると思うと嬉しい

ただそれだけの事

「………と、お気に入りのお人形とは？」

「ああ、そこにあるよ」

Aさんは綺麗な人差し指で、机の上を指した

そこには赤色で目立つ
可愛らしい蛸の人形………

蛸…………？

「こ、この人形を選んだ理由は、言えないんだけど………！
　なんか、可愛くって………名前はたこちゃんって言って………」

「…………理由、教えてくださいよ」

「い、言えません…………！！！！」

もし

その理由が

アズールは蛸の人魚で
好き、だから

そんな理由であってほしいなと

きっと違うというのに

願ってしまった

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