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「勝者……、A氏」
いつの間にか周りに集まっていた、他の部員の歓声が聞こえる
全てAさんが勝ったことに喜んでいる声
僕が、初めて顔を出した人に負けてしまうなんて、
考えられない
これは一生、イデアさんに笑われることになる……
いや、今はそんな事は関係ない
僕は物申そうとAさんの目を見つめる
その時に見えたAさんの表情は
さっきまでとは打って変わった、
優しい笑顔などない
まさにそれはヴィラン顔、というべきか
Aさんは目を細め、僕を見つめる
口角をあげては、煽るようにして言った
「アズールくんも強いんだねぇ………」
寮長呼びではなくなった事に、この時は気付かず
ただ僕は心臓の鼓動を早める事しかできず
………僕はこの日
Aさんに惹かれた
「あ、僕この後お友達と勉強会するので、また」
「ラジャ」
Aさんはいつもの優しい笑顔に戻り
理由をつけてこの場から去っていった
僕はその後も、
ただ呆然と、Aさんが座っていた椅子を眺める
Aさんに隠れた優しい笑顔の裏側を知って
僕はこれ以上の《Aさんの裏側》を知りたくなってしまった
……目が離せなくなった
これを陸では《恋に堕ちた》と呼ばれるそうで
この僕があんな人を好きになるなんて
人生、何が起きるか
本当にわからないものだ
「Aさんの正体が知れる日が楽しみです……フフフ」
「……？、アズール氏なにか言った？」
「いえ、何も？お気になさらず」
僕たちもボードゲームをしようと準備をする
何度も負けたが、悔しくもない
脳裏には
Aさんのあの表情が焼き付いて、忘れられない
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作者名：F . | 作成日時：2024年2月4日 23時
