きっと僕達『偶然』なんです。【ジェイド】前篇 (ページ5)

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お母さんに連れられ

着いた先は森に隠れるように建てられた
木造建築の家だった

中に入っては、お母さん…母は僕をソファーに座らせてくれる

「長い道のりで疲れたでしょう」と

様子がおかしいクロシェットさん相手でも、優しい対応

陸の人間は面白い、と思える瞬間でもあった

「…実は今、この体の方と入れ替わってまして」

「入れ替わり……？やっぱり、今のクロシェットじゃないと思ったら……」

「ええ、残念ながら、今のクロシェットさんは……僕の体の方に……」

「……貴方は、どこから来た誰なんだい…？」

やはり聞かれたか

と、予定調和な質問にうんざりしながらも

丁寧に答える

だって僕は慈悲の寮の副寮長なんだから

優しい

いや、営業スマイルで母に話した

「賢者の島はご存知ですか？
　その島にあるナイトレイブンカレッジの在学生です」

「まあ、あのすごいと噂されている」

「ジェイド・リーチ、１７歳です」

「お若いわね」

「ありがとうございます」と思っても居ないことを言っては

僕はこの家から出ていこうと椅子から立ち上がる

そんな様子に気づいた母は、
僕の歩みを止めた

「今日はもう遅い、娘がいなくなるのも母として悲しいし……
　寝よう、またあした、行けばいいさ」

「……」

入れ替わりは、たしかに

いつもの平凡で面白くない日常を飾るのには適しているが

肝心な幼馴染のアズール
そして片割れのフロイドがいないと

どうも落ち着かない

「…わかりました、ベッド、使わせてもらいますね」

「ああ、いいよ」

母に、クロシェットさんの部屋に案内されては

僕はベッドに入り、目を閉じる

可愛らしい部屋で、水色一色
女の子らしい部屋とは、この部屋のことを言うのだろう

……きっと、クロシェットさんは
突然の入れ替わりにびっくりして

今頃、母と会えない状況に泣いているのだろうか

(早く、この町から出なければなりませんね)

魔法が生んだ不幸

僕が責任を取らなくては

いつもは

見知らぬ人に情けをかけない僕だが

部屋に飾られている絵を見る限り
どうしてもクロシェットさんに同情してしまって

入れ替わりを解いてあげたくなったのだ

「貴方にも、僕と同じような……
　「片割れ」がいるのですね」

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