きっと僕達『偶然』なんです。【ジェイド】前篇 (ページ23)

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「………おや、ここは……？」

目が覚めた…ような気がする

だけれど、「完全に起きた」という
いつもの感覚はなくて

それに、いつもと違う景色が目の前に広がる

薄暗い、森の中

寝ている間にここに来るとは思えない

『―――。――』

「誰か、そこにいるんですか？」

一つ木々を抜けた先に、誰かの声がした

歩いて向かうと、
そこにはあの絵画に描かれたクロシェットさんと似ている別の人間………

僕の考えが合っていれば
彼女はシェルーンだろう

『――ねぇ、クロシェット』

『なあに？シェルーン』

「おや……？」

今は僕の魂を宿しているクロシェットの姿が
目の前にある

瓜二つの姿が、楽しそうに花摘みをしている

これは、なんの記憶だろうか……

『今日は大きないちごのケーキを食べたの』

『わぁ！すごいね！』

『クロシェットのために、こっそり持ち出してきたの』

『ありがとう、シェルーン！』

そう言って、シェルーンさんは
転移魔法か、手元からケーキを出す

それを見たクロシェットは嬉しそうに笑った

まるでコレは、夢のような空間で………

『ねえねえ、シェルーン！
　私は今日ね、沢山の妖精さんとお話したの！』

『どんなお話をしたの？』

『えーっとね？綺麗なお花を見つけられた事とか
　色々！』

『たくさん話したんだね
　クロシェットが楽しそうでよかったよ』

……今の現状と全く違う立場の二人がそこにいた

クロシェットさんは、今は町の皇女だが
目の前にいる人は「皇女ではないただの人」

シェルーンさんは、今は分からないが
どうしてか、クロシェットさんの「皇女」の座を手にしている

そしてやっと、僕はこれが夢だという事に気がつく

「クロシェットさんの記憶を見ている気分です……
　一体これは、どういうことなんでしょう………」

『明日はチョコレートケーキを食べる予定なの
　また持ってくるね』

『うん！楽しみにしてる！』

二人が手を振り、別れの挨拶をしている

すると、僕の視界が歪みだし、黒く消えていく

クロシェットさんとシェルーンさんの間にある関係性を
何も掴めていないまま明日を迎えてしまう

だめだ

まだここに

ここに………！！

『お兄さん。早く帰ってね』

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