第十話 フルーレ.side ページ11
主様と出会うことができて、嬉しさからその日は沢山泣いてしまった。
少し落ち着くと、俺に笑顔を振りまいてくれたあの顔が頭から剥がれず、
何枚もの衣装のラフを描いた。
少し眠気が来たから寝ようと思ったけれど、主様が恋しくて、あまり眠れなかった。
俺を必要として、俺の作った服を着て、
そして、「フルーレはよく頑張ってるよ。」って言って貰いたい。
悪魔執事なのに、俺は弱かった。非力で、身長も低くて。
だけど主様や皆は、それを受け入れてくれた。だからこそ、俺は主様を守りたかった。
主様を守れなかった自分は、無価値で、生きている資格なんて無いと、あの時悟った。
だけど、こうして会うことができたんだ!
主様は、記憶が無いようで、だからこそ、あの幸せな時間を思い出してほしいと願った。
出来ることなら、執事たち皆と、主様、全員と一緒に、暮らしたいなぁ。
そんな妄想に浸りながら、夢の中に沈んでいく。
「ねぇねぇフルーレ、町で綺麗な布を見つけてね、買ってみたの!良かったら、衣装に使って!」
俺に、美しい笑顔を見せる主様。嗚呼そっか。これは夢か。
「ええ、分かりました!主様の為に、頑張りますね!」
そう答えると、主様は、少し不思議そうな顔をして、また笑顔に戻った。
「あ、ううん!これは執事の皆に使って!こんな綺麗で繊細な布、私が使っちゃったらもったいないからさ!ね?」
自分よりも、他の執事を優先してしまう主様に、俺は少しだけ、怒ってしまった。
「っ!そんなこと…そんなことないです!主様は綺麗で、優しくて、それでいて…俺は、貴方の事が!」
自分でも取り乱してしまったと思い、すぐに口を閉じ、焦りながら謝る。
「フルーレ、謝らないで。ごめんね、変なこと言っちゃったよね。でも、本当に気にしなくていいよ。」
そう言いながら、俺の髪を撫でる。それは、母が子をあやすように優しかった。
だけど、主様は、その布を執事に使うことを俺にお願いをした。
しぶしぶ俺は了承したけど、あまり乗り気ではなかった。
俺は、主様の事を心から愛している。
それなのに、主様には、それが伝わってないと、改めて実感してしまったから。
「でも、無理もないよね。俺は主様に、何も、伝えれずに、終わったんだから。俺が何か言葉にしていれば、変わってたのに。」
ふと、何処からか自分の声がする。
俺の全てを否定しているような言葉に、耳を塞ぎたくなった。
そっか、しかた、ない、よね…
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作者名:夢野みぃ | 作成日時:2023年12月10日 14時