検索窓
今日:13 hit、昨日:18 hit、合計:3,257 hit

第十話 フルーレ.side ページ11

主様と出会うことができて、嬉しさからその日は沢山泣いてしまった。

少し落ち着くと、俺に笑顔を振りまいてくれたあの顔が頭から剥がれず、

何枚もの衣装のラフを描いた。

少し眠気が来たから寝ようと思ったけれど、主様が恋しくて、あまり眠れなかった。

俺を必要として、俺の作った服を着て、

そして、「フルーレはよく頑張ってるよ。」って言って貰いたい。

悪魔執事なのに、俺は弱かった。非力で、身長も低くて。

だけど主様や皆は、それを受け入れてくれた。だからこそ、俺は主様を守りたかった。

主様を守れなかった自分は、無価値で、生きている資格なんて無いと、あの時悟った。

だけど、こうして会うことができたんだ!

主様は、記憶が無いようで、だからこそ、あの幸せな時間を思い出してほしいと願った。

出来ることなら、執事たち皆と、主様、全員と一緒に、暮らしたいなぁ。

そんな妄想に浸りながら、夢の中に沈んでいく。




「ねぇねぇフルーレ、町で綺麗な布を見つけてね、買ってみたの!良かったら、衣装に使って!」

俺に、美しい笑顔を見せる主様。嗚呼そっか。これは夢か。

「ええ、分かりました!主様の為に、頑張りますね!」

そう答えると、主様は、少し不思議そうな顔をして、また笑顔に戻った。

「あ、ううん!これは執事の皆に使って!こんな綺麗で繊細な布、私が使っちゃったらもったいないからさ!ね?」

自分よりも、他の執事を優先してしまう主様に、俺は少しだけ、怒ってしまった。

「っ!そんなこと…そんなことないです!主様は綺麗で、優しくて、それでいて…俺は、貴方の事が!」

自分でも取り乱してしまったと思い、すぐに口を閉じ、焦りながら謝る。

「フルーレ、謝らないで。ごめんね、変なこと言っちゃったよね。でも、本当に気にしなくていいよ。」

そう言いながら、俺の髪を撫でる。それは、母が子をあやすように優しかった。

だけど、主様は、その布を執事に使うことを俺にお願いをした。

しぶしぶ俺は了承したけど、あまり乗り気ではなかった。

俺は、主様の事を心から愛している。

それなのに、主様には、それが伝わってないと、改めて実感してしまったから。

「でも、無理もないよね。俺は主様に、何も、伝えれずに、終わったんだから。俺が何か言葉にしていれば、変わってたのに。」

ふと、何処からか自分の声がする。

俺の全てを否定しているような言葉に、耳を塞ぎたくなった。




そっか、しかた、ない、よね…

第十一話 フルーレ.side→←第九話 You.side



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (15 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
22人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:夢野みぃ | 作成日時:2023年12月10日 14時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。