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「なんで?一緒に作ったら楽しいよ。それに、家でもこれ食べられようになるし」
「それはそうかもしれんけど」
別にわざわざ俺がAのオムライス作れるようにならんくても、食べたくなったらAの家でAが作ってくれたやつ食べるからええねん。
真顔で、冗談めかしもせずにこういったチーノを呆然と見つめる。
きっと本心からの言葉だった。嬉しくて表情筋が緩むのを感じる。どうやったって彼の言動に私が勝手に振り回されるのだ。ついさっきできたばかりの傷の上にはもう絆創膏が貼られていた。
「…チーノのためだったらいつでも作るよ」
オムライスでも、それ以外でも、なんでも。
私がそう言うと、何やら得意げな表情をしたチーノがスプーンを行儀悪くくるくると回しながら頬杖をついた。
「まだ俺のこと、好き?」
何を、当たり前のことを。
「好きじゃなかったら手料理出さないし、こんな時間に男1人を家にあげたりしないよ」
「そっかそっか。俺のこと好きなのは昔と変わらないくらい?」
「ううん」
昔よりずっと好き、という言葉は悔しいので飲み込んだ。それでもきっとチーノにはバレている。昔からそうだ。彼には私の考えていることなんか筒抜けで、わからないことなんて1つだってないだろう。
対して、私は今も昔もチーノが何を考えているのかなんて少しだってわからなかった。今も、どうしてまだ好きなのかどうか聞いてきたのかさっぱりだ。
たぶん、私が彼に告白したのと同じくらいの回数だけ確認されている。
今さらチーノ以外の人を好きになるなんて、天地がひっくり返るくらいのことがなければきっとないのにね。
なんてことないふりをしながら夕食を終え、順番にお風呂に入り、深夜のテンションで近くのコンビニまでお酒を買いに行った。
色違いのスウェットを着た男女がケラケラ笑いながらカゴいっぱいに缶チューハイとおつまみやお菓子を放り込んでいくのだから、きっとうるさかったしちょっと怖かっただろうな。素面でもハイテンションの人たちにはちょっと関わりたくないだろうに。しかも男の方は身長190cmオーバーで見た目は輩だし。
めぼしいものを買い込んでコンビニを後にし、私が比較的軽いお菓子の袋を持って、チーノがお酒の袋を持ち部屋に戻る。春になったとはいえ、まだ夜は冷える。少し冷たくなった指先をこすり合わせていたら、重たいビニール袋をどさりと床に置いたチーノが私の首筋に彼の冷えた指先を押し付けてきた。
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薄暮(プロフ) - とてもこの作品に心を打たれました、感謝です!Twitterの方フォロー申請を送りましたがDMが送れずましゅまろに送らせて頂いたしろくれです。ご確認頂ければ助かります。 (7月19日 1時) (レス) id: 5d47810ff6 (このIDを非表示/違反報告)
える@脅威推し - かれんちゃん・・・あつ森・・・ヴッ 頭が (2022年4月19日 16時) (レス) @page14 id: 68204072c5 (このIDを非表示/違反報告)
牛タン(プロフ) - じばくとっこうたいさん» コメントありがとうございます!私自身、書きながらなんでshpくん報われないんだ?と思っていました。ナンデヤッ。これから番外編でshpくんサイドのお話を少し書こうと思っているので、そちらもお楽しみいただければと思います! (2022年4月14日 20時) (レス) id: ddd9b490a0 (このIDを非表示/違反報告)
じばくとっこうたい - 遅くなりましたが、完結おめでとうございます。更新される度に、いつもワクワクしながら読ませていただきました。夢主ちゃんとciとの関係も好きですが、やっぱり私はshp君を推したい…と悶えてました。本当に大好きです。次回作も楽しみにしています! (2022年3月23日 18時) (レス) @page32 id: 8209a7a990 (このIDを非表示/違反報告)
牛タン(プロフ) - スイさん» コメントありがとうございます!思わせぶりなciくんも、一途な夢主も、お互いがお互いのことをずっと好きだったんじゃないかなと思いながら書きました😊大好きと言っていただけてとたも嬉しいです!お付き合いいただきありがとうございました! (2022年3月23日 1時) (レス) id: 08f70284ce (このIDを非表示/違反報告)
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