9人の王子様との恋、いかがですか？ -in summer-

＊ ページ9

***









雄也「んんっ、暗くなってきたしそろそろ帰るか。」








·









先生の言葉でハッとなる。









真上にいた太陽が

いつの間にか海に溶け込んでいて、









オレンジ色のおはじきを並べたみたいに

海と空がキラキラと輝いている。









·









「きれい…」









·









ポソッと呟くと、

先生もだな、と小さく声を漏らす。









·









太陽が海に反射していて、

いつまでも眺めていたかった。









けれど、太陽が沈みきったら

楽しい時間はおしまいになる。









海で泳ぐことは出来なかったけど、

すごく楽しくて。









あっという間だった。









·









来週から水泳部の大会があるから先生は忙しくなるし、

夏休みが明けたら今度は私が忙しくなる。









次、いつ会えるか分からない。

帰りたくないな…









·









雄也「帰りたくないなぁ。」

「……っ、はい。」









·









よかった…

先生も同じこと思っていた。









コクコクと首を縦に振る私を見て、

先生は優しく笑う。









·









雄也「そうそう!

これ渡しとかないとって思ってたの!」









·









車に戻り、シートベルトを閉めていると

思い出したように、手の平にポンと乗せられる。









小さくて、冷たい感触……









少しだけ浮かれた様子の先生に、

首を傾げながら手を広げた。









·









「…っ、これ……」









·









ガバッと顔を上げて、真正面から先生と目が合う。

先生は、ふふん、と薄い唇の端を少し上げて笑って。









·









雄也「それね、俺んちの合鍵。」









***

＊→←＊

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す