死の隣人 ページ45
「えっ……?」
「外には見張りがいるから、窓から出ていけたとしても逃げられないわよ」
流れ落ちる蜂蜜のような美しい髪を揺らしながら、彼女はそう締めくくった。
「なん、でそれを……」
「なんでって、そりゃこの私がこうまでされてるのに
ただ大人しく捕まっていてあげる訳がないじゃない」
粗雑な縄くらいなら抜けられるんだけど、これは流石にね
そう言って彼女はいたずらっぽい笑みで手首に嵌められた金属製の枷を見せつけるようにして、じゃらじゃらと鎖を鳴らしてみせた。
どうやらこの見目麗しい美姫は見た目程淑やかな性格ではないらしい。
「ね、そういえばあなたの名前はなんていうの?私はアリエッタ
アリエッタ・リーベスク・ペタル」
長い名前。
貴族や王族といった特別階級の名前には家名や先代の名前、領地名等が加えられるため長くなる。
以前、Aの客が自慢気に説いていた知識だ。
確かにこれ程の美貌をもつ女性ならその程度の地位にあってもおかしくはないが
なら何故一人で出歩き誘拐などされている?
彼女の名前がでっち上げのものではないのならば、何か複雑な事情でもあるのだろうか。
しかしそれは自分には関係のないことだ。
浮かんだ疑念は生まれた瞬間に弾け消え、形のいい唇から少し掠れた声が吐息混じりに漏れた。
「……A」
髪で顔の右側を覆ったまま、少しだけアリエッタの方を見やる
「Aね、覚えたわ……とてもいい名前ね」
そう言って彼女は柔らかな笑みを湛えた。
アリエッタが先程より元気なのはAに対する緊張が解れたからなのだが、当の本人が気付くはずもなく。
少しばかり会話に空白が生まれ、弛緩した空気が漂いだしたその時だった。
鍵もかけられていない部屋の扉が開かれ、無造作な足取りで
しかし足音は一切立てずに黒いスーツを纏った男が入ってきた。
159人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あああああ(プロフ) - kohakuさん» コメントありがとうございます!とっっっっっっっても嬉しいです!!!続きは鋭意執筆中ですのでもうしばらくお待ち頂けたら、と思います!あまり時間がかかり過ぎないよう頑張ります! (2021年3月25日 23時) (レス) id: 1513927827 (このIDを非表示/違反報告)
kohaku(プロフ) - とても素敵な物語に引き込まれました、続きが楽しみです!更新頑張ってください! (2021年3月21日 21時) (レス) id: 5df933aa41 (このIDを非表示/違反報告)
あああああ(プロフ) - 紅紫((うっせぇわさん» とても沢山のお褒めの言葉、ありがとうございます!これから続編へと入るのでこれからもどうか宜しくお願いします! (2021年3月15日 3時) (レス) id: 1513927827 (このIDを非表示/違反報告)
紅紫((うっせぇわ - なんて言ったらいいんでしょう。凄くこのお話の中に吸い込まれていって自分がそこにいるかのような…表現の仕方とか自分がしっかりとそこにいるような。これらをまとめて『GOD作品』と言う。辞書で調べて下さい。出てきます。 (2021年3月10日 21時) (レス) id: 37c73b0d69 (このIDを非表示/違反報告)
あああああ(プロフ) - wyさん» コメントありがとうございます!あまりにも嬉しくて手が震えてます…最近は更新頻度が落ちてきてますが、ちゃんと最後まで続けますのでこれからもよろしくお願いします! (2019年9月8日 14時) (レス) id: 1513927827 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:あああああ | 作成日時:2019年4月21日 20時