8話 永き神話の果て ページ23
Aはフラフラと亡霊のように光へ向かって歩いていく。
別に新たな希望が生まれてきた訳でもないし、マーカスのことが吹っ切れた訳でもない。
ただ、日が昇ったら逃げ出して と彼が言ったからそうしているだけだ。
絶望するだけならこうして歩きながらだってできる。
彼が作ってくれた時間を無駄にしたくなかった。
しかしこの洞窟……かなり広いな、魔物や動物なんかが棲みついていてもおかしくないのに
既にランタンの明かりも消えてしまっているのでその岩肌の隅々までは見えないが、横穴に潜んだ獣に襲われたらAは抵抗する術がない。
幸い他の生き物がいる気配は全くなく、何事もなくAは歩き続けていく。
しばらくすると、広間に出た。
そこは、ここが山の中の洞窟であるということを忘れてしまう場所だった。
まず、とてつもなく広い。
ひろびろとした空間は、そこそこに立派な屋敷一軒ぐらいなら軽々と入ってしまえるだろう。
見上げると首が痛くなりそうなくらい高い天井は、一部鉱石のようなものでできており向こうが透けて見える。
その上には湖があるようだった。
水中を通って差し込む光は鉱石で乱反射し、洞窟内に実際に入ってきている光量の何倍もの明るさを演出している。
Aはこの鉱石に反射した光を辿って来たのだ。
そしてそんな広大な空間の中央には、遠目で見てもかなりの大きさがある鉱石が地面から少しばかり浮いていた。
ごつごつと不格好な形だが、わずかな光を受けこれでもかと言わんばかりに輝いていた。
その美しさはもはや宝石の様相を呈している。
その鉱石の周りには尖った岩々が円状に並んでいる。
どことなく祭壇──見たことはないが──を思わせるその場所はここから小高い所にあり、岩の階段がかかっている。
階段の両脇から祭壇のような場所を取り囲むように水が溜まっていて、かなりの深さがあるように見える。
「何ここ……」
およそ自然に造られた場所ではないことはわかる。
しかし苔や植物は一切ないのに、定期的に誰かが整備しに来ている訳ではなさそうなのだ。
明らかに奇妙でいて、神秘的だ。
最後に水を飲んだのは馬車に乗っていた時だったし、体のあちこちが土や血で汚れていたがAは清涼な水には目もくれず階段を駆けのぼった。
たった十段をのぼりきると、池の向こうで行き止まりになっていた。
「はは……出口、ないか……」
Aは思わずへたり込んだ。
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あああああ(プロフ) - kohakuさん» コメントありがとうございます!とっっっっっっっても嬉しいです!!!続きは鋭意執筆中ですのでもうしばらくお待ち頂けたら、と思います!あまり時間がかかり過ぎないよう頑張ります! (2021年3月25日 23時) (レス) id: 1513927827 (このIDを非表示/違反報告)
kohaku(プロフ) - とても素敵な物語に引き込まれました、続きが楽しみです!更新頑張ってください! (2021年3月21日 21時) (レス) id: 5df933aa41 (このIDを非表示/違反報告)
あああああ(プロフ) - 紅紫((うっせぇわさん» とても沢山のお褒めの言葉、ありがとうございます!これから続編へと入るのでこれからもどうか宜しくお願いします! (2021年3月15日 3時) (レス) id: 1513927827 (このIDを非表示/違反報告)
紅紫((うっせぇわ - なんて言ったらいいんでしょう。凄くこのお話の中に吸い込まれていって自分がそこにいるかのような…表現の仕方とか自分がしっかりとそこにいるような。これらをまとめて『GOD作品』と言う。辞書で調べて下さい。出てきます。 (2021年3月10日 21時) (レス) id: 37c73b0d69 (このIDを非表示/違反報告)
あああああ(プロフ) - wyさん» コメントありがとうございます!あまりにも嬉しくて手が震えてます…最近は更新頻度が落ちてきてますが、ちゃんと最後まで続けますのでこれからもよろしくお願いします! (2019年9月8日 14時) (レス) id: 1513927827 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あああああ | 作成日時:2019年4月21日 20時