7話 自縄自縛 ページ22
大気が震えた。
音がしたなんて呑気なもんじゃない、今までとは明らかに異質な轟音。
Aは足場の悪い洞窟内をランタン片手に走り続けていたが、それをきっかけに立ち止まった。
「マーカス……」
自らを犠牲に僕へ逃げるよう言ってくれた彼は……無事、なのだろうか？
あんな、折れた脚で大勢の屈強な男達に立ち向かって。
どうしよう。どうすればいい。
引き返して様子を見に行きたい。
しかしそれで男達に捕まってしまってはマーカスの思いを踏みにじることになる。
でも彼は絶対無事じゃすまない。僕のせいで。
逡巡。
Aはまた奥へと走り出した。
頬を伝い落ち行く涙を後ろに残し。
.・*・.・*・.・*・.・*・.
どれぐらい走っただろうか。
Aは息がすっかり上がってしまい、震えた足がもつれて転んでしまった。
マーカスの残したマントを身に着けていたため擦過傷はない。
恐る恐る後ろを振り向き耳をすませてみるが、自分の息づかいと心音以外に何も聞こえない。
Aは立ち上がらなかった。
マーカスが何をやったのかはおおよそ検討がつく。
あの場にあったものはAだって全て把握していたのだ。
きっとあの短剣を使って落盤を起こしあの洞窟の入り口を塞いだのだろう。
木枠も何もない自然にできた穴だ、被害はかなりの広範囲に渡っただろうからきっとマーカスは巻き込まれて……
死んだだろう。
そうでなくともあの轟音だ、かろうじて生きていたとしてももう……。
だから様子を見に戻ってはいけない。
マーカスは己の命を賭してまで僕を逃してくれたのに、それを裏切るようなことをしてはいけない。
でも、これから先君なしでどうすればいいの
この洞窟から出られたとして
無事に国境を超えることができたとして
どう暮らしていけばいい？
どう生きていけばいい？
不思議ともう涙は出なかった。
ただただ、絶望感に気圧され途方に暮れていた。
その時不意にランタンの灯りが消えた。
中の蝋燭が燃え尽きたのだろうか。
しかし完全な暗闇が再び戻ってくることはなかった。
細々とした一筋の光が洞窟の奥からAを手招いていたのだ。
「光……陽が昇った、のか？」
長い長い夜だったが、ようやく明けたのか
……行かなきゃ
まるで何かに誘われるようにAは立ち上がると、ふらふらと無気力な足取りで更に奥へと進んだ。
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あああああ(プロフ) - kohakuさん» コメントありがとうございます！とっっっっっっっても嬉しいです！！！続きは鋭意執筆中ですのでもうしばらくお待ち頂けたら、と思います！あまり時間がかかり過ぎないよう頑張ります！ (2021年3月25日 23時) (
レス) id: 1513927827 (このIDを非表示/違反報告)
kohaku(プロフ) - とても素敵な物語に引き込まれました、続きが楽しみです！更新頑張ってください！ (2021年3月21日 21時) (レス) id: 5df933aa41 (このIDを非表示/違反報告)
あああああ(プロフ) - 紅紫（（うっせぇわさん» とても沢山のお褒めの言葉、ありがとうございます！これから続編へと入るのでこれからもどうか宜しくお願いします！ (2021年3月15日 3時) (レス) id: 1513927827 (このIDを非表示/違反報告)
紅紫（（うっせぇわ - なんて言ったらいいんでしょう。凄くこのお話の中に吸い込まれていって自分がそこにいるかのような…表現の仕方とか自分がしっかりとそこにいるような。これらをまとめて『GOD作品』と言う。辞書で調べて下さい。出てきます。 (2021年3月10日 21時) (レス) id: 37c73b0d69 (このIDを非表示/違反報告)
あああああ(プロフ) - wyさん» コメントありがとうございます！あまりにも嬉しくて手が震えてます…最近は更新頻度が落ちてきてますが、ちゃんと最後まで続けますのでこれからもよろしくお願いします！ (2019年9月8日 14時) (レス) id: 1513927827 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：あああああ | 作成日時：2019年4月21日 20時
