6話 ブッ飛んじまいな ページ19
マーカスはしばらくの間Aの瞳に魅入っていたが、上から物音が聞こえた瞬間顔を上げた。
馬の蹄が土をえぐり駆けている──そんなような音が断続的に聞こえた。
「まずい……まだ私達を捜しています……すぐ近くに来ている」
「マーカス、奥へ隠れよう」
「いや、それは……危険だ。どこまで続いているかわからないし、奴らがもし犬狼の類を連れていたらお終いです」
Aは恐怖に顔を強張らせた。
自分達が見つかってしまうことへ恐怖したのではない。
マーカスの決意に満ちた瞳から全て悟った彼は、失うことに恐怖を懐いているのだ。
「ま、待ってよ!」
マーカスは折れた脚で懸命に立ち上がり、入ってきた方へと少しずつだが歩んでいく。
Aはすぐさま追いつき、袖口を引く。
床に敷かれたマントとランタンが置き去りにされた。
マーカスはこの切迫した状況で尚もいつものように柔和な笑みを浮かべた。
それは決して作り笑いの類ではない、心からの微笑みだった。
「離してください……このままでは二人とも……」
「嫌だよ、僕だけ残して行かないでよ……マーカスがいないぐらいなら僕はこのまま捕まったって、死んだって構わないのに」
「……A、孤高で気高い私の女神……。
愛する人を死なせたくないという私の願い、どうか聞き届けては下さいませんか?他に何も望みませんから……」
「〜〜〜〜っ!!!!!」
Aは彼の背中へとすがりついた。
ずるい、ずるいずるいずるいずるい
そんなのは僕だって同じなのに、どうして
歯痒い。
初めて愛した人一人護れない自分の力の無さが憎い。
彼はこんなにも身体を、その命ですら張っているというのに!
自分にはどうすることもできない。
ここでこのまま嫌だ嫌だとごねたところで状況は悪化していくだけ。
かと言ってマーカスを連れて逃げていくことも、自分にはできない。
自分には力も
知恵も
何も──ない
彼とは違って。
「おいテメェら!そこにいるのはわかってんだぞ、大人しく出てこないとどうなるか教えてやろうかぁ!?」
ドヤドヤと大勢の男達が押し寄せてくる。
かくして二人は魔法の白い光に強く照らし出された。
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あああああ(プロフ) - kohakuさん» コメントありがとうございます!とっっっっっっっても嬉しいです!!!続きは鋭意執筆中ですのでもうしばらくお待ち頂けたら、と思います!あまり時間がかかり過ぎないよう頑張ります! (2021年3月25日 23時) (レス) id: 1513927827 (このIDを非表示/違反報告)
kohaku(プロフ) - とても素敵な物語に引き込まれました、続きが楽しみです!更新頑張ってください! (2021年3月21日 21時) (レス) id: 5df933aa41 (このIDを非表示/違反報告)
あああああ(プロフ) - 紅紫((うっせぇわさん» とても沢山のお褒めの言葉、ありがとうございます!これから続編へと入るのでこれからもどうか宜しくお願いします! (2021年3月15日 3時) (レス) id: 1513927827 (このIDを非表示/違反報告)
紅紫((うっせぇわ - なんて言ったらいいんでしょう。凄くこのお話の中に吸い込まれていって自分がそこにいるかのような…表現の仕方とか自分がしっかりとそこにいるような。これらをまとめて『GOD作品』と言う。辞書で調べて下さい。出てきます。 (2021年3月10日 21時) (レス) id: 37c73b0d69 (このIDを非表示/違反報告)
あああああ(プロフ) - wyさん» コメントありがとうございます!あまりにも嬉しくて手が震えてます…最近は更新頻度が落ちてきてますが、ちゃんと最後まで続けますのでこれからもよろしくお願いします! (2019年9月8日 14時) (レス) id: 1513927827 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あああああ | 作成日時:2019年4月21日 20時