狩りを為せ ページ18
マーカスの手元にはAの血に塗れた鏃が転がっている。
オレンジ色の灯りに照らし出された傷口は見る間に閉じていき、ついになんの痕も残さず元の綺麗な肌へと治った。
「すみません、乱暴にしてしまい……まだ痛みますか……？」
荒く息を吐くAは
つ、と垂れた涎と涙を拭うと姿勢を正し気丈に返す。
「へ、へーき……ありがとう、ね」
「いえいえ」
マーカスはいつものように陽だまりの様な柔らかい笑みを一瞬だけ浮かべる。
言いたくない
Aのことがこんなにも好きなのに
なぜずっと一緒にいられないのだろう
しかし言いたくないことでも言わねばならない時というものはある。
マーカスはひとかたまりのため息をポン、と押し出した。
「ここでもうしばらく休んで陽が昇ったら……西へ真っ直ぐ行ってください、ここからなら恐らく三刻程で国境を超えられます」
……。
「え……っと、マーカス……も一緒に行く、んだよね？」
「私はこの足では満足に動けません、貴方が出ていったら場合を見て奴等を引きつけますから安心して─」
「そんなの！そんなの嫌だよ……！」
「A、お願いですから……私は貴方に生きてほしいんです」
Aは嫌々と頭を振るが、緑の目は真っ直ぐに見つめてきている。
「ごめんなさい……わかって下さい」
涙がこみ上げてきて、ついに頬を伝い膝を濡らした。
「なんでよ……そんなの、ひどいよ……僕は、君がいるから外に出てきたのに……」
「A……最後まで責任を果たせないこと、許してくださいとは言いません
しかし貴方は私などいなくとも自由になれます」
ここが神のいる世界だったならば、おとぎ話のように愛する者の涙で傷が癒えただろう。
でもこの世に神などいないし、僕は穢れた存在だ
奇跡も慈悲も何もない。
「君がいない所で生きていっても、そんなのつまらないよ……」
マーカスはAを正面から抱きしめた。
Aは一瞬だけ身を硬くした。
汚れた欲のない抱擁に戸惑ったのだ。
彼はいつだってAに暖かいものをくれる。
「最後に……その瞳を見せて下さいませんか」
Aはこくりと頷き、土埃と涙とに薄く汚れた黒い眼帯を外した。
名残惜しげに抱擁が解かれ、二人は互いに顔を上げた。
「嗚呼……とても美しい」
赤い
残酷な世界を映す大きな瞳は
どんな宝石よりも輝かしい
涙に濡れたそれはまるで
朝露を纏う熟れた果実の様に
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あああああ(プロフ) - kohakuさん» コメントありがとうございます！とっっっっっっっても嬉しいです！！！続きは鋭意執筆中ですのでもうしばらくお待ち頂けたら、と思います！あまり時間がかかり過ぎないよう頑張ります！ (2021年3月25日 23時) (
レス) id: 1513927827 (このIDを非表示/違反報告)
kohaku(プロフ) - とても素敵な物語に引き込まれました、続きが楽しみです！更新頑張ってください！ (2021年3月21日 21時) (レス) id: 5df933aa41 (このIDを非表示/違反報告)
あああああ(プロフ) - 紅紫（（うっせぇわさん» とても沢山のお褒めの言葉、ありがとうございます！これから続編へと入るのでこれからもどうか宜しくお願いします！ (2021年3月15日 3時) (レス) id: 1513927827 (このIDを非表示/違反報告)
紅紫（（うっせぇわ - なんて言ったらいいんでしょう。凄くこのお話の中に吸い込まれていって自分がそこにいるかのような…表現の仕方とか自分がしっかりとそこにいるような。これらをまとめて『GOD作品』と言う。辞書で調べて下さい。出てきます。 (2021年3月10日 21時) (レス) id: 37c73b0d69 (このIDを非表示/違反報告)
あああああ(プロフ) - wyさん» コメントありがとうございます！あまりにも嬉しくて手が震えてます…最近は更新頻度が落ちてきてますが、ちゃんと最後まで続けますのでこれからもよろしくお願いします！ (2019年9月8日 14時) (レス) id: 1513927827 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：あああああ | 作成日時：2019年4月21日 20時
