2話 兆候 ページ6
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「はぁ……」
Aは体を引きずりながら自室へと戻ってきた。
上にある窓から見えた空は既に白み始めていた。
先の男の部屋で見た、真上に輝いていた満月の姿は薄汚れた平屋の影に隠れてしまっていた。
彼の仕事の時間は特に決まっていない。
店も一日中開いており、客が来れば従業員は駆り出される。
この勤務体制が従業員らの自律神経を狂わせ、気力も何もかもが搾り取られている。逃げ出そうとする者などいるはずがなかった。
Aの体には男に絞められた首のアザも、肉が裂けるまで噛まれた指の傷も、
中に吐き出された白い液体も今では跡形もない。
浴室で隅々まで洗い流したせいもある。
いつの頃からかAは軽い怪我程度ならすぐに治ってしまうようになっていた。
普通の人間ではなく、死神の子だからかもしれないが
それはAにとってどうでもいいことだった。
経営陣も知らないことだが、常連の幾人かは把握している。
それをいいことに彼達は毎度暴力をふるってきた。
流石に骨折ともなれば治るまでに時間がかかってしまうが、軽傷ならば店にバレない。
金を払わなくていいこと以上に嬉しいことがあるだろうか!
Aは何もかもが嫌だった。
客も、店の人間も、嫌いだ。
目を合わせただけで自制が効かなくなり何をされても悦んでしまう自分も、嫌いだ。
ここから逃げ出せるだけの力もない自分が
嫌いだ
Aはいつしか考えることすら放棄した
そうでもしないと、とても耐えられなかった
そうして死んだように生きていく
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あああああ(プロフ) - kohakuさん» コメントありがとうございます!とっっっっっっっても嬉しいです!!!続きは鋭意執筆中ですのでもうしばらくお待ち頂けたら、と思います!あまり時間がかかり過ぎないよう頑張ります! (2021年3月25日 23時) (レス) id: 1513927827 (このIDを非表示/違反報告)
kohaku(プロフ) - とても素敵な物語に引き込まれました、続きが楽しみです!更新頑張ってください! (2021年3月21日 21時) (レス) id: 5df933aa41 (このIDを非表示/違反報告)
あああああ(プロフ) - 紅紫((うっせぇわさん» とても沢山のお褒めの言葉、ありがとうございます!これから続編へと入るのでこれからもどうか宜しくお願いします! (2021年3月15日 3時) (レス) id: 1513927827 (このIDを非表示/違反報告)
紅紫((うっせぇわ - なんて言ったらいいんでしょう。凄くこのお話の中に吸い込まれていって自分がそこにいるかのような…表現の仕方とか自分がしっかりとそこにいるような。これらをまとめて『GOD作品』と言う。辞書で調べて下さい。出てきます。 (2021年3月10日 21時) (レス) id: 37c73b0d69 (このIDを非表示/違反報告)
あああああ(プロフ) - wyさん» コメントありがとうございます!あまりにも嬉しくて手が震えてます…最近は更新頻度が落ちてきてますが、ちゃんと最後まで続けますのでこれからもよろしくお願いします! (2019年9月8日 14時) (レス) id: 1513927827 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あああああ | 作成日時:2019年4月21日 20時