喧騒 ページ34
「あ、え……と、ちが、くて……」
恐怖。
文字通り死ぬ様な思いをしてまで抜け出してきた。
なのに当時の、汚れた、乱れた自分のことを知る者がいる。
許されるならば黒く塗り潰してしまい二度と思い出してしまいたくない、忌まわしき過去が再びAを襲っていた。
震えるAの呟きは余りにもか細く。
寧ろ呟いたというよりはその形のいい唇が僅かに開閉されただけであり、まともに発声発語されてすらいない。
故に、彼の魂が怯える音はどんなに聴覚の優れた者がいようと聞くことは叶わなかっただろう。
総ての生物の頂点に座する恐るべき竜以外は。
「人違いだろう」
聞く者に威厳を感じさせずにはいられないその声音が凛と響く。
夏の抜けるような空を閉じ込めた双眸は平時よりもその鋭さを増している。
腕と脚を組み背もたれに上半身を預けたアスールのその姿は誰がどう見ても男達を威圧していた。
「……いや、俺達が間違えるはずはないな。ましてやこんな綺麗な男がそうぽんぽんいてたまるかよ」
男、という単語にじっと聞き耳を立てていた周囲の客がざわつく。
「知ったことか。この俺が違うと言っているのだ、散れ」
アスールのあまりに傲慢不遜な物言いに男達が色めき立ち、反論しようと口を開こうとする。
刹那。
店内の空気が質量をもって圧しかかってきた。
二人の男の心臓はその拍動を強く速くし、息を荒くさせる。
二人がどれだけ腕の立つ剣闘士であろうと、その重圧からは逃れられない。
アスールは人の姿をしているだけの竜なのだ。
伝説を生きた天上の生物に敵意を向けられて怯えない者は、心を失ったか壊してしまった者だけだ。
「あっ、ぐ……もう知らん！行くぞ」
「おい、待てよ！」
男達は何も注文しないままに慌てて外へと飛び出していく。
ドラゴンともなれば羽虫を追い払う時でも指一本とて動かさずにいられるものなのだ。
「す、げぇな……」
「ふん、飯も食い終わったことだ。俺達も行こう」
瞠目するトールにも構わずアスールは席を立つ。
そんな彼の姿にAは金髪の青年と目を見合わせた。
「……彼、ちょっとマイペースなとこがあって」
「あ、おお、まあ……そうみたいだな」
気まずそうにこちらを覗き込んでくるAにトールの顔は耳まで赤くなるが、既に当の本人は青髪の長身へと駆け寄っている。
羽織るマントの裾を引くAに愛おしげな目を向ける彼を見た。
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あああああ(プロフ) - kohakuさん» コメントありがとうございます！とっっっっっっっても嬉しいです！！！続きは鋭意執筆中ですのでもうしばらくお待ち頂けたら、と思います！あまり時間がかかり過ぎないよう頑張ります！ (2021年3月25日 23時) (
レス) id: 1513927827 (このIDを非表示/違反報告)
kohaku(プロフ) - とても素敵な物語に引き込まれました、続きが楽しみです！更新頑張ってください！ (2021年3月21日 21時) (レス) id: 5df933aa41 (このIDを非表示/違反報告)
あああああ(プロフ) - 紅紫（（うっせぇわさん» とても沢山のお褒めの言葉、ありがとうございます！これから続編へと入るのでこれからもどうか宜しくお願いします！ (2021年3月15日 3時) (レス) id: 1513927827 (このIDを非表示/違反報告)
紅紫（（うっせぇわ - なんて言ったらいいんでしょう。凄くこのお話の中に吸い込まれていって自分がそこにいるかのような…表現の仕方とか自分がしっかりとそこにいるような。これらをまとめて『GOD作品』と言う。辞書で調べて下さい。出てきます。 (2021年3月10日 21時) (レス) id: 37c73b0d69 (このIDを非表示/違反報告)
あああああ(プロフ) - wyさん» コメントありがとうございます！あまりにも嬉しくて手が震えてます…最近は更新頻度が落ちてきてますが、ちゃんと最後まで続けますのでこれからもよろしくお願いします！ (2019年9月8日 14時) (レス) id: 1513927827 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：あああああ | 作成日時：2019年4月21日 20時
