過去 ページ42
＜来歴＞
キルゴア・ヴォガネットは少数民族の住まう隠れ里とでも言うべき街、エルバの出身。混血を尊ぶ宗教であるアスタル教を信仰するエルバの民の中でも、アスタル教の司祭の家に生まれた。
跡継ぎでは無かったキルゴアは、遊びに出ては農作業を手伝う傍ら、行商人や異教の宣教師に頼んで持ち込んで貰った本や自分用のプランターを使って作物の収量増加や交配についての研究を行う、植物学者のようなことをしていた。
素朴ながらものどかで平和な街で暮らしていたキルゴアだったが、ある日馴染みの行商から不吉な知らせが届いた。
「この国の統治者が、隣国からの新しい宗教が広まるのを嫌がって異種族を追放しているらしい」
それ以降、大都市から逃れた者がエルバにやって来始めたが、エルバの民は「こんなへんぴな土地だし、そもそも今まで何も無かったのだから」と暢気に過ごしていた。
だがある晩、街は軍隊に襲撃された。「悪しき異教の集落を滅ぼす」として。
アスタル教徒たちは「逃げて生き延びればいつか故郷に帰れる」と信じてエルバから着の身着のまま逃げ延びたが、故郷を護るために残ったり、負傷して街を出られなかった者も多くいた。
キルゴアは、いつか来た宣教師に全ての種族が平等に生きる理想郷として教えられたイヴィルの大聖堂へ向かおう、と提案しエルバの生き残りと共に聖地サンドリエドへと向かった。
旅路の途中、キルゴアの身に異変が起こった。だんだんと耳が聞こえにくくなっていたのだ。
襲撃によって触覚を失ったせいか、あるいはストレスによるものなのか、次第に消えていく音。それでもキルゴアは同胞の安住の地を求めて歩みを止めなかった。
何日もの旅の果てに聖地に辿り着き、エルバの民達は無事に保護された。けれど、その頃には既にキルゴアはほとんど耳が聞こえなくなっていた。
それから暫くして、アスタル教徒であった彼らは、イヴィル教徒は良い人たちばかりだが自分たちの信仰を捨てたくはないとして大聖堂を出て行った。ただ一人、キルゴアを除いて。
キルゴアは、イヴィルの人々に世話になった恩義を返したいと言って大聖堂に残った。
……本当は、障がいを抱えた自分が足手まといになるのを嫌がってのことだったが。
故郷で植物に精通していたキルゴアは、大聖堂の庭園で庭師の職に就くこととなった。
それ以来ずっと、別れた仲間を思いながら一人静かに過ごしている。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
キューブ(プロフ) - やすりさん» お声かけいただきありがとうございます。関係組みのご提案ありがとうございます！喜んでお受けします！詳細についてはボードにて伺いたいので後ほどやすり様のボードにお邪魔します (2023年1月25日 17時) (
レス) id: 8222095e45 (このIDを非表示/違反報告)
やすり(プロフ) - コメント失礼いたします。東京:カニバリズム様参加者のやすりと申します。キューブ様宅のカレッタ=カレッタさんと関係を組ませていただきたいと考え、コメントさせていただきました。ご検討いただけると幸いです。よろしくお願いいたします。 (2023年1月25日 14時) (レス) @page14 id: 593e731786 (このIDを非表示/違反報告)
元素(プロフ) - CS提出ありがとうございます！ぱぱーーーー！！頑張って生きてーーー！！！不備等ございませんのでこのまま受理させていただきます！今後も当企画をお楽しみください！ (2022年7月31日 20時) (レス) @page3 id: 656d2fa00c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
