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ページ42

「はっ…はっ、はっはっ」






肺の頭身体で僕は走った






冬の冷たい空気が棘となり僕を刺す






それでも尚、足を止めぬ理由は






僕を待っている人がいるから








「A!!!」







海の見える汚い貧民街





そんな中にいてもAは綺麗だった







あの日と同じように







何も写さぬまで







僕にッ









『殺してください』








そう告げた







『…龍之介さん』









『貴方の手によって救われた私を、貴方の手によって殺して欲しい』










『そうすれば、あの日に私が死んだことになりそうで』








『この苦しかった日々が全て消えてくれる気がした』









『世界を書き換えられるような気がしたの』








『あの日、芥川さんは私を拾わず殺した』








『そこで私の物語はおわるの』









『最後のお願い。一生に一度のお願い』










『私を殺して。龍之介さん』








そう言って僕を見つめるAの瞳は透き通り綺麗で









それでいて希望に満ち溢れていた









強く握った服には皺がやった








目を逸らすことなく見つめてくる瞳を








しっかりと捉えたまま静かにつげた








「…羅生…もん」








伸びていく黒獣がAの首を掻き切った








膝から力無く倒れたAを見て僕は動けずにいた








やっとの思いでAの横にしゃがむと







Aは嬉しそうに僕を見て








『ありがとう。龍之介さん』









そう告げてそのまま息の根を引き取った








血は広がるばかりで









冷たくなった手を握っても名前を呼べども









返事もない静寂が訪れた










「…」









そう言えば、今日はAの誕生日だったか







「大きくなったな。」








20の誕生日








Aは死んだ








Aと酒を交わす夢は今消えてなくなった








ただ、Aはもう居ない









その事実だけが僕の心に冷たく響いた









プルルルル…プルルルル








ぴっ









太宰「…芥川くん」








「太宰さん。Aは行きました」








太宰「そうかい。そうなのだね」









太宰「芥川くん、辛かったね。よく堪えたよ」









「ッはい」









その後、動かなくなったAを抱き抱えて保管所まで運んだ。









それからは早かった。








何十分の1にもなってしまったAは今、少しの波を感じながら








永遠の眠りについた。

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夢幻泡影(むーにー)(プロフ) - 猫春#ねこはるさん» 読んでもらえてとっても嬉しいです!舞い上がってますw最初とその後の切り替え凄いですよね、ややこしい事になってしまいすみません…と思いながら優しい太宰さんも怖めな太宰さんも好きなので書いてしまいました (12月24日 21時) (レス) id: fd232344cc (このIDを非表示/違反報告)
夢幻泡影(むーにー)(プロフ) - 来世は推しと生きたいさん» ありがとうございます!次回作は芥川さんから一度離れてみようかと思い別の人物に手を出してしまいました。毎作品、最後まで読んでくださり本当にありがとうございます! (12月24日 21時) (レス) id: fd232344cc (このIDを非表示/違反報告)
猫春#ねこはる - 取り消します。死ぬほど優しかったです(((今読んでる最中の人 (12月24日 17時) (レス) @page11 id: f169115c31 (このIDを非表示/違反報告)
猫春#ねこはる - 太宰さんが怖すぎて好きです (12月24日 17時) (レス) @page7 id: f169115c31 (このIDを非表示/違反報告)
来世は推しと生きたい - 完結おめでとうございます!!何度も主様の作品に泣かされました…本当に感動物です。私は芥川推しなのですが,主様の書く原作を保ちながら優しさを少しずつ見せる感じがすごく好きです。あと夢主ちゃんの性格も毎回好きです!次回作も読ませて頂きます! (12月24日 17時) (レス) @page44 id: 3324b2c332 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:夢幻泡影(むーにー) | 作成日時:2023年10月16日 0時

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