【実況者】弱点だらけの僕と【wrwrd！】 (ページ11)

今日:4 hit、昨日:1 hit、合計:27,735 hit

９話ページ11

Aside

木々の間をするすると駆け抜けていく。
この仕事は、スピードが命。敵に気付かれても背後から狙う。
こっちのスピードについていくのは難しいだろう。

それにしても…こんなに気配が少ないのは初めてだ。

それだけ敵が、前線に気を取られているということだろう。

「隊長！危ない！！」

インカムから聞こえたエリの焦った声に、どうしたと声をかけようとした時だった。
パァン！という発砲音と共に、左の肩口に焼けるような痛みが走る。

これで俺は全てを察した。

裏取りがバレてる。

ーー誰か裏切り者がいるっ！！

俺は木の後ろに隠れると、刹那。パァンと響く発砲音と雨のように弾丸が降り注いだ。
幸い撃たれたのは左腕。利き腕の右腕が撃たれたらと思うとゾッとする。

A「っ…は…こちら…裏取り部隊。裏取り失敗。どうやら情報がもれていた模様。」

ザワザワ…！とインカムから焦ったような、驚いたような声が聞こえる。

グル『A、今はどういう状況だ？』

A「っ…はは…流石にヤバイかな…敵多いし、銃弾は撃たれてるし、俺もミスったし。」

手荷物に入ってる包帯を取り出して、肩にキツく巻き付け止血する。

グル『…ほう、では部隊自体はどうだ？』

A「…緊急…点呼｡エリ、オリヴァー。」

エリ『敵影ともに異常なし、俺もオリヴァーも無事です』

A「…アネル、バルド…」

アネル『無事です！』

A「ボリス、カルロス、エリク、フルート」

カルロス『敵に遭遇したけど、同じく無事だよー！隊長！』

フルート『こちらも、無事だ。いつでも動ける』

俺は思わず笑みがこぼれた。
有能すぎない？俺の分隊。

グル『…どうだった？』

A「全員無事だと。あー、ミスったの俺だけかぁ…」

後でトントンにヒヅメでド突かれそうだ。優しい彼ならきっと傷口は避けてくれるだろう。
怪我をじっと見つめる。
…全治１週間が一ヶ月になりそうだ。

グル『…A』

A「分かってるよ」

俺は少しづつ、銃弾の音が消えていく。
どうやら回り込むつもりのようだ。暗闇は俺の得意なフィールドなのに。

グル『…A、そこにいる敵を全て抹殺しろ』

A「ハイル…グルッペン。」

さぁ、視野を広くしよう。

ーーー逆転の一手を狙って。