８噺 ページ10
Aside
俺が見た中で一番、綺麗だと思う空があった。
思い描いてみれば、今の状態じゃ２度と手に入れることはできないあの空。
グル「A、空に行きたいゾ」
A「は？」
今、総統…グルッペンの口からとんでもない事が聞こえたぞ。
俺は今まで総統室にあるソファーに預けていた体を少しだけ起こして、グルッペンを見つめる。
A「…俺に飛行機を出せと？」
グル「察しがいいな。その通りだ。」
A「…訓練じゃなくて？」
当たり前だろう！と頬を膨らませるグルッペンだが、全く可愛くない。
これっぽっちも可愛いとは思えない。
寧ろ、邪悪さだけが滲み出て、怖い。
A「…なんで急に…グルさんなら、いつでも乗りたい時に乗れるだろ…？」
グル「お前とトントンの２人で乗ったんだろ？」
それを聞いて納得した。
つい一週間前の事だった。
俺とトントンが戦場に出て見事に勝利を収めた時、燃料が少し余っていることをいい事に、俺はトントンを乗せたまま、機体を一回転させた。
無論、その後トントンに粛清された。
A「グルさんは一回転してみたいと？」
グル「ああ、勿論。トントンに内緒でやるゾ！」
まぁ、俺は溜息をつきながらも、その事を了承した。
あの機体は、安定性に優れていたし、何よりいつも書類やら何やらで、この部屋からあまり出れないグルッペンを出してやりたかった、というのが本音だ。
A「…なら、明日の夜明け前。そこでフライトしましょう。燃料もたくさん積んで何なら海まで行きましょうか。まぁ、執務を全部終わらせられたらですけど」
グル「おお！」
グルッペンは目を輝かせ、自分の前にある大量の書類を片付けていく。
普段からこうしてればトントンに怒られることもないのに。
俺はゆっくりソファーから起き上がり、部屋を後にする。
機体に燃料の準備、兄さんに頼まなきゃ…
さて、今回は何をやらされるのやら…
俺は欠伸を一つ零し、重い足を兄さんのいるであろう方に向けた
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作者名：翔和 | 作者ホームページ：
作成日時：2017年4月23日 21時
