第四十二話 ページ44
遊園地に着くと、絮安は思っていた以上に楽しそうにしていた。
疲れを感じる……私もおばさんの階段を登り出しているのかしら。
『ふぅ…』
ベンチに座って、少々休憩タイム。
絮安は、目の前にあるアイスクリーム屋で吟味中だ。
「すまないがお嬢さん、隣いいかな?」
『え?…ああ、もちろん構いませんよ』
体をずらして座り直すと、ベンチに腰掛けた相手を見た。
その人は丸い眼鏡をかけた初老の男性だったけれど、その体格はとてもしっかりとしている。
「君は、あそこのアイス屋の少年のお姉さんかね?」
『いいえ、違いますけど……どうしてそう思われたんですか?』
「赤毛がよく似ているし、仲が良さげに見えたからな」
『あの子は私の息子なんです』
「ほー。随分とお若いな。いろいろと苦労をしたんじゃないのか?」
『周りの方々は皆さん良い人ばかりでしたし、それほどでもありませんでしたよ』
父親がいないという事を白い目で見てくる人もいなかったし、エース君達も遊んでくれたから本当に助かっている。
そのおかげか、絮安も素直に育ってくれているし。
「おかあさん、そのおじさんだれ?」
選び終わって買ってきた絮安が戻って来た。
『今さっき知り合った人よ……ああ、お名前を伺っていませんでしたね。私は檜垣千紘といいます。この子は空条絮安です』
「私はここらではレイさんと呼ばれている、ただの老いぼれだよ」
絮安を隣に座らせると、レイさんは絮安の顔を見つめていた。
『この子がどうかしましたか?』
「いいや……髪色は似ているが、顔立ちはほとんど父親似なのだろうと思ってね」
『そう…ですね。小さい頃のあの人にそっくりです』
絮安を見ていると、初めてあった時の――まだ私とそんなに変わらない身長だった承君を思い出す。
あの頃の承君は、お人形さんみたいで可愛かったなぁ〜。
「今日は、相手の旦那は一緒じゃないのかね?」
『ああ…実は、父親の男性はいないんです。理由あって、離れ離れになってしまいまして』
「それは、踏み入った事を聞いてしまったな。すまない」
『いえ、気にしないで下さい』
もし、彼に会えたら――なんて時折考えてしまう事があるけれど、それはつまり承君もあちらの世界で死んでしまうという意味だ。
そんな事思ってはいけない。承君は、もっともっと生きていかないといけない存在なんだから。
私の身勝手な思いで、彼を殺すなんて……できないよ。
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ローグ - めっちゃ面白いですね!更新頑張ってください!あ、あと16話の″後悔″は″航海″ですよ! (2019年3月24日 20時) (レス) id: 9534f8c68f (このIDを非表示/違反報告)
ナーガ(プロフ) - 輝夜さん» コメントありがとうございます!!返信が遅くなってしまいごめんなさい!これからもよろしくお願いしますっ! (2017年11月5日 15時) (レス) id: 44a0d047ab (このIDを非表示/違反報告)
輝夜 - 一言いいですか・・・・・おもしろすぎるわ馬鹿やろぉぉぉぉぉ!!!しかもコラソンとロー出てるしやばい((一言で収まらなかったw (2017年10月21日 15時) (レス) id: 9db3921189 (このIDを非表示/違反報告)
閻魔舞(プロフ) - ナーガさん» WWW はい!読ませていただきます! (2017年9月24日 1時) (レス) id: c9845c6beb (このIDを非表示/違反報告)
ナーガ(プロフ) - 閻魔舞さん» ありがとうございます!!よければ、他の作品もよろしくお願いしますね!(さりげなくアピールww) (2017年9月23日 22時) (レス) id: 33ea84a1a7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ナーガ | 作成日時:2017年8月8日 18時