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大谷
「…亡くしたの」
大谷「え?」
「凄く…大好きだった人を…、事故で亡くして」
「それから恋愛が怖くなって、人を好きになるのも」
「だから恋愛とか、誰かを好きになりたくなくて。また失っちゃう気がして。」
衝撃だった。なんだか僕の身体に電気が走ったかのように
感じた。
大谷「そ、うなんだ…」
「その人はね、付き合ってた頃からずっと"子供が苦手"って言ってて。もしこの人と結婚をしても子供は作れないのかぁって諦めてたの。でも2人でも十分楽しかったからいっか。って思った。」
「だけど彼が亡くなったのは、5歳の男の子がお母さんの注意を聞かずに踏切に走って向かってしまって。それを助けるためだった。」
大谷「…っ、」
「あれだけ…嫌いだ、苦手だって言ってたくせに…最期は子供を助けるために自分の命を落とした…すごくムカついたの、どうしてって」
Aは泣き出してしまった。
きっと彼を思い出したのは久しぶりなんだろう、
「だけど彼は命を落としたけどその男の子は無事で…でもその事を素直に喜べなかった…っ、素晴らしい事をしたはずの彼へも怒りしか無かった…、49日が過ぎても実感が湧かなくてっ、ずっと暗闇にいたんだけど生きて行くためには仕事しなきゃだし…、当時はアルバイトをかけ持ちして生活しててカメラマンになりたくて…それで出会ったのが工藤監督だったの」
「工藤監督は、今にも命の光が消えそうな私の話を2時間も聞いてくれてっ、…ずっと行けてなかった彼のお墓参りに付き合ってくれて」
大谷「…」
「そのお墓参りの時に…あの男の子が来てくれて。…言われたの」
「"お姉さんの大好きな人が夢に出てきたよ"って。男の子のお母さんに詳しく聞いたら、男の子の夢に出てきた彼は、私に伝えて欲しい事を男の子に託したらしくて、連絡先を交換してなかったから、毎日お墓参りに来てお姉さんを待ってたって」
大谷「その、…彼が伝えて欲しかった事って?」
「愛してる。ただそれだけ」
大谷「…」
「それだけっ、…それだけなのに…っ、心全体を覆ってた雲が全部消えてっ…それが全部涙として一気に溢れたのっ…、それで、監督は…すぐに立ち直るのは無理だろうけど僕は君をカメラマンとして一人の人間として必要とするし、うちの関係者もそのうちそうなるよって言われて」
「ホークスに行こうって決めたの」
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作者名:maru | 作成日時:2021年8月7日 22時