HANA ~ (ページ40)

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大谷

起こしちゃ悪いと思い、寝室を出て

冷蔵庫に飲み物などを入れ、
ベッドの脇にあった小さなテーブルに、
のど飴や栄養補助食品を置いた。

すると手が滑り見事に水の入ったペットボトルを落としてしまい

フローリングだった事もあり、ボトンっとそれなりに大きな音が響いた。

僕はその瞬間、目をぎゅっと瞑ったが

起こしてしまったんじゃないかと、片目をゆっくり開けると

「…」

ばっちり目が合った。

叫ばれないだろうか？
誰か分かってるだろうか？とか色々考えて言葉を発せないでいると

ものすごくしんどそうな、涙目で

「…しょ、へい？」

と言われたので、帽子を取って

大谷「ご、ごめん！起こすつもりは無かったんだけど、…あ、あとその勝手に入っちゃってごめんなさいっ」

大谷「す、すぐに帰るから！色々買ってきたし2.3日は大丈夫だろうからしっかり栄養とってね！」

とだけ言い、去ろうとすると

～ぎゅ

大谷「…う、」

背を向けた瞬間、服を握られ動けなくなった

怒られるのかなと思っていると

か弱い声で

僕の心を締め付ける言葉をAは放った。

「もうちょ、っと…いられ、ない？」

大谷「…」

「…だ、め……？だよ、ね…」

どんな表情をしてるかは分かってたけど

僕はゆっくり振り向いた。

彼女のその表情をこの目に焼き付けたくて。

振り返ると予想通りの表情だった。

涙目で顔は熱のせいかほんのり赤くて

大谷「…」

「…？」

僕の服を握る手はものすごく震えていた

大谷「ダメだよ、A」

「…ご、めん…さすが、に…キモすぎた」

こんな時でもちょっと笑えちゃう事を言う彼女がどうしようもなく愛おしくて

大谷「そうじゃなくて、」

大谷「もう少しいて欲しいのがダメなんじゃないよ」

「えっ、？」

ゆっくりAに近づき

数十センチの距離になった

大谷「その顔、表情が反則だからダメなんだよ」

「ん？…」

数十センチの距離は僕から一気に縮めて

僕はマスクを外して、

右手を、Aの頬にそえて

ゆっくりキスをした。

抑えられなかった。

僕は基本こんなに積極的じゃないし
奥手って言われるんだけど

Aの表情は、僕の性格すらも変えてしまった

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