走らせるペン ページ7
DH「その話なんだけどさ……。」
ドンヘはゆっくり歩き出すAの背中から声をかける。
後ろを同じような歩幅で付いて来た。
DH「A…いなくなった時の事とか覚えてるのか…？」
「そんなの……覚えてる訳ないでしょ…。」
DH「じゃあ…事故の事は…？」
「それは……思い出したくもないわ…。」
DH「だよね……。」
思わず浮かべた苦笑い。
ハッと何かを気づいたような顔でAの前に回り込んだ。
DH「そうだ。さっきの。」
「さっき？」
DH「決めておきなさいってなんだよ？」
顔を横に背けるAはドンへの横を通り過ぎた。
DH「A。」
「自分の気持ちをしっかり持ってなさいって事よ。」
DH「何に対して？」
これから来る…
あなたにとって…
一番辛い選択…
あなたには一番させたくない…
でも…
あなたにしか出来ない選択…
「未来に対して。」
DH「もうちょっとちゃんと説明しろよ……全然分かんないんだけど…。」
「ノーヒントよ。自分で考えて。」
草木も眠る丑三つ時。
結構な距離を歩いて戻って来たAとドンへ。
ドンヘはベッドにうなだれるとアッと言う間に寝息を立てた。
めいっぱいお酒の回っていたA。
目を閉じれば一瞬で夢の中へ行けそうだったのに、部屋の中央にある椅子を引いた。
辺りを見回してペンと適当な紙を引っ張って来て椅子に座る。
何かを考えるような顔をして指先で唇を撫でる。
お酒のせいかやけにズキズキ痛んでいる包帯の巻かれた手でペンを握った。
うまく書けない文字。
それでもペンを走らせる。
真剣な顔で何かを書き終わると自分の左手薬指にはまっているマリッジリングを抜き取った。
文字を書いた紙の上に乗せて包むように折りたたむ。
ベッドに傍らに落としっ放しのドンへの鞄の内ポケットに突っ込んだ。
ドンヘを起こさないように端に静かに腰を下ろす。
無邪気な寝顔を見せているドンへの頭をそっと撫でた。
「また……会えるといいわね……。」
勝手に震える唇。
指先も肩も。
震わせたいと思わないのにドンドン震えて来た。
歪めた顔に落ちる涙。
手の甲で慌てて拭う。
それでも次から次へと落ちて止まらない。
「ドンへ………愛してるよ……愛……してる……。」
消えてしまう語尾。
穏やかな寝息の中に混ざる小さな小さな泣き声。
Aは一晩中。
ドンヘの傍で止まらない涙を落とし続けた。
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みんはは(プロフ) - ゆちょみんさんのお話はハッピーエンドになると言い切れないからドキドキします( > <。)ドンへが幸せになれますようにただ祈るのみ( > <。) (2017年4月24日 13時) (
レス) id: 2600b841f9 (このIDを非表示/違反報告)
りん(プロフ) - 切ない苦いですね(TT) (2017年4月23日 12時) (レス) id: 81ec167096 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ゆちょみん
| 作者ホームページ：http://ameblo.jp/yuchuming/
作成日時：2017年4月22日 11時
