変な部屋 ページ29
よく晴れた韓国の空。
髪を揺らすのは穏やかな風。
めいっぱい息を吸い込めば潮の香りが漂った。
「………イル…。」
背中から声をかけられて振り返る。
バルコニーの手すりに寄り掛かって微笑むのはイルだった。
IL「お帰り。俺のA。」
長い腕を伸ばせば近寄って来た細い身体がおさまった。
Aはイルの身体に抱きつく。
IL「どうした？」
「………イルの…匂いがする……。」
甘えるように身体を寄せる細い肩をグッと抱き寄せた。
IL「よく一人で戻れたね。連絡してくれれば迎えに行ったのに。」
Aは首を横に振った。
「どうしても会いたかった…。」
IL「どうしても？」
穏やかな口調。
Aはイルを見上げた。
「女優Aと………共有出来ない時間が怖いの……。」
イルは表情を曇らせる。
「きっと……ドンヘの腕にいたんだわ……。私の身体に感覚だけが残ってた…。」
IL「それが……怖いか…？」
「怖いわ………。私の知らない時間……。」
いつ…
どんな風に…
どんな気持ちで…
あの腕にいたのか…
ドンヘはどんな言葉を囁いて…
私はどんな顔をして…
その先を言うのもイヤでギュッと目を閉じた。
潤ませた瞳でイルと見て服をギュッと握りしめるA。
「イル……私は……あなたがいい…。あなたの腕がいい…。」
困った顔で微笑みながらつくため息。
IL「キミが本来愛すべき存在の腕にいるより……俺の腕がいいのか…？」
「不安なの……怖いのよ。」
小さな頭をそっと撫でる。
その指先が細いあごをクイッと持ち上げると、イルはゆっくり顔を下ろす。
自然と落ちるAの瞼。
艶やかな唇に触れた後、深く重なるキスを落とした。
Aが入った部屋の扉を静かに静かに開くドンへ。
顔だけ覗かせて辺りを見回す。
変な部屋だった。
誰もいない事を確認すると、音を立てないように気を付けて扉を閉めた。
広すぎるくらいの部屋。
大きなベッド。
広いデスクの上のパソコン。
ベッドの傍らの医療器具。
ここって…
もしかして…
辺りを見回しながらゆっくりと歩くドンへ。
バルコニーへ続いている開かれた窓の向こうからハッとさせるような声。
IL「唇が少し冷たいね…。」
「温めて……。」
IL「キミのドンへは唇を温めてもくれないのか…？」
「あまり……そういう事にならないようにしてるの…。」
IL「え？」
イルは首を傾げた。
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みんはは(プロフ) - ゆちょみんさんのお話はハッピーエンドになると言い切れないからドキドキします( > <。)ドンへが幸せになれますようにただ祈るのみ( > <。) (2017年4月24日 13時) (
レス) id: 2600b841f9 (このIDを非表示/違反報告)
りん(プロフ) - 切ない苦いですね(TT) (2017年4月23日 12時) (レス) id: 81ec167096 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ゆちょみん
| 作者ホームページ：http://ameblo.jp/yuchuming/
作成日時：2017年4月22日 11時
