way -光の射す方へ- Part2 (ページ47)

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女優である限りページ47

夜9時過ぎ。

珍しく早く終わった撮影。

壁に寄り掛かって見ていた雪とドンへ。

でもドンへはどうしてもAに声をかける事が出来なかった。

スタッフたちがはけていく。

いつまでも立ち上がらないA。

梓は鞄を肩から下げながら言った。

梓『旦那がいたらシーンひとつで泣いてるようじゃ、主演女優は取り戻せないわよ。』

クスクスと笑う。

梓『みっともないわね。日本一が泣くからもう女優なんてやめなさいよ。』

言い返さないAの前に回り込んだ。

梓『あんたみたいなのがいつまでもいると、私の名前にも泥を塗る事になるのよっ！！』

目を伏せているだけのA。

梓は「ふんっ」と鼻を鳴らすと、つまらなさそうな顔で背を向けた。

扉の横のドンへを見つけて足を止める。

梓『日本語分かります？』

DH『え…あ…少しなら…。』

梓は身体を寄せて顔を近づけた。

梓『私に乗り換えません？私、日本一売れてる女優だから。』

ハッとするAは立ち上がって梓とドンへを振り返る。

Aの慌てようにクスッと笑う梓。

梓『ほらぁ、あんなに動揺してみっともないですよね。』

Aに視線を投げるドンへ。

わざとらしく、伸ばした手でドンへの頬を撫でた。

梓『日本一は、日本一にふさわしい女優の所に来るものです。考えておいて。』

頬に小さなキスをすると、笑みを浮かべてスタジオを出て行った。

日本一は…

日本一にふさわしい女優の所に…か……

私の所に来なかったって事は…

私はそれにふさわしくなかったって事…

ドンヘも…

女優も…

子供も…

そんな風に欲張ろうとしたから私は…

ただのシーンひとつこなせなくて…

ホントね…

みっともない…

みっともなくて……

泣けてくるわよ…

剣史『A……梓の言う事なんか…。』

『帰るわ……お疲れ様…。』

鞄を掴むとゆっくりと扉に近づいて行く。

縮まって行くドンへとの距離。

『雪……ドンへお願いね……。』

雪『あんたも送って……。』

『私は……いいわ……。』

扉に手をかける。

DH「A…。」

名前を呼ぶただその声だけで分かるの…

あなたがどんなに辛い思いをしたか…

私は…

やっぱり…

あなたの妻でいてはいけないのかもしれない…

女優である限り…

避けては通れない道だから…

ドンヘが呼ぶ声に小さい反応だけして、Aは静かに扉を閉めて出て行った。