way -光の射す方へ- Part2 (ページ45)

今日:18 hit、昨日:18 hit、合計:66,450 hit

感じていた視線ページ45

分かってる…

これは仕事だ…

仕事なんだ…

何度も頭の中でそう言い聞かせた。

出れば良かったと…

本気で後悔した…

ドンヘは拳を静かに強く握りしめる。

目尻からこぼすAの涙。

むさぼるように重ねるキス。

真っ白い肌を撫でる指先と愛していると囁く声。

震わせる唇をキュッと噛む。

もう見たくないと思うのに、そこから少しも動けない。

大勢のスタッフやキャストがいる前。

まるで本当にそれが行われているようなリアルな姿のAと剣史。

絡みつかせる二人の視線が本気だった。

それは…

演技なのか…？

それとも…

考えなくてもいいような事が頭の中に過る。

乱した服から見せる綺麗な身体がビクッと反応した後耳を塞ぎたくなるようなAの声。

そしてかかるカットの声。

今まで抱き合っていた腕がピタッと止まる。

剣史『お前……大丈夫か……。』

力無くベッドに預けていた身体。

演技で流したはずの涙が止まらない。

『大……丈夫よ……。』

声を震わせて起き上がる。

スタッフが大急ぎでバスローブをかけにやってきた。

ずっと感じてた…

ドンヘが…

私を見ている視線を…

ドンヘの方を向けなくて背を向けてベッドに座る。

歯を食いしばって涙をグッと堪えると、細い指先でサッと拭った。

指定席に戻って服を着る。

梓は鼻を鳴らした。

梓『随分リアルでしたね。ホントは出来てんじゃない？あなたたち。』

剣史『梓…それ以上言ったら本気で怒る……。』

梓『ふんっ。』

長い足を組み替える梓。

腕を組んで指定席に座ろうとするAの背中に投げかけた。

梓『こんなとこ見せられてご主人も可愛そうよね。どうする？関係に亀裂入ったら。』

剣史『梓ッ！！』

梓『おーこわ。』

降参のポーズを見せて肩をすくめた。

剣史はAの背中に手を添える。

剣史『気にすんな……。』

『分かってる……。』

小さな声で応えてAは指定席に腰を落とした。

スタジオを出たドンへ。

重たい足を引きずってロビーまでやってくると、雪がソファに座って足を組んでいた。

肩を落としているドンへを見て察する。

きっと、あの撮影を見たのだろうと。

雪「ドンへくん。」

呼ばれる声に顔を上げると雪はドンへに笑顔で手を振っていた。

浮かない顔を少しだけ引っ込めるドンへは、雪に近づいた。