way -光の射す方へ- Part2 (ページ35)

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久しぶりの日本ページ35

久しぶりの日本は韓国と違う匂いがした。

耳に流れる言葉がやけに懐かしい。

日本での住居に案内されて荷物を置くとそのままスタジオへ直行した。

雪『台本とか見なくて大丈夫なの？』

『台本？そんなもの…もう頭に入ってる…。』

雪『え？だって渡したのは一昨日よ？』

Aは小さなため息。

『だから……何度も言わせないで…。私を誰だとっ………。』

何度繰り返すんだろう…

繰り返した後の後悔。

詰まる言葉の先を探す。

雪はルームミラーでAの姿をチラッと見る。

寂しそうに目を伏せた後窓の外に視線を投げた。

通い慣れたスタジオビルのロビー。

コツコツとヒールの音を立てて雪の後ろを歩く。

顔が半分以上隠れてしまうような大きなサングラスをかけて。

勝手知ったるなんとやら。

どこに何があるかもわかる程毎日詰めた場所。

Aは勢いよく重たい扉を開いた。

その音に振り返る視線を感じる。

煉『お出ましですね。』

剣史『あぁ。』

既にしっかり作り上げられていたセット。

韓国のスタジオよりずっと狭いが、そのセットの精巧さは負けてない。

Aはサングラスを取るとスタジオ中を見回して誰に向けるわけでもなく頭を下げた。

ドンヘのいない国…

ドンヘのいないスタジオ…

ドンヘのいない生活…

この緊張感が心地いい…

愛する男の腕に守られて…

勘が鈍ったなんて言わせない…

ここは…

私の土俵よ……

キリッとした顔を持ち上げた。

スタジオの中ほどに並んで立つよく知る顔。

剣史はAを見てニヤッと笑った。

Aは笑い返す。

近づいてくる二人。

煉『お久しぶりです。』

『えぇ。』

剣史『来たな。』

『来たわ。』

差し出される手を握る。

しっかりと。

そして。

梓『ようこそ。日本一売れていた女優、Aさん。』

モデルのようなスタイル。

Aを見下ろすように近づいてくると嫌な笑みを浮かべる。

剣史と煉の間に割って入る。

私を引きずりおろした…

張本人…

今…

日本一売れてる女優…

私を引きずり下ろして主演女優をかっさらった女…

梓『私の事覚えてます？暮にご挨拶したんですけど。』

『忘れたわ。』

梓『じゃあもう一度します？』

『不要よ。』

挑発的な物言いと態度。

Aは梓の横を通り過ぎるとスタッフたちと難しい顔をしている監督に頭を下げた。

何度か顔を合わせた事がある監督で、Aの顔を見てとても喜んでいた。