クランクアップ ページ31
そしてやってくる。
クランクアップの朝。
最後はジテの部屋が静かに閉まるシーンで終わる。
ドンヘは長い事見てきたセットの扉を少しだけ寂しそうな顔で閉めた。
指定席でそれを見つめていたA。
監督の最後のOKが響くと目を伏せて小さなため息をついた。
ひとつの仕事が終わる時…
例えようのない寂しさが襲う…
まるで…
たくさんの色を重ねて来たはずなのに…
その痕跡を少しも残さず…
開けば真っ白…
そんなスケッチブックみたいに…
明日からこのスタジオの扉を開けば…
別のセットの中で…
別の役者が…
新しい話に色を付け始める…
昨日の…
積み重ねた日々の余韻を少しも残す事なく…
それが…
たまらなく寂しい…
大きな拍手があちこちで湧き上がる。
スタッフが持って来てくれる花束を受け取るドンへ。
Aの分を受け取ると、指定席の前に立って浮かない顔のAを見下ろした。
視界に入るスニーカーに気づいて顔を上げるA。
DH「そんな顔するな…。」
「……どんな顔よ…。」
寂しそうに微笑んで視線を横に逸らした。
ドンヘは自分が貰った花束をスタッフに預けると、Aに用意された花束を両手で抱える。
DH「三ヶ月ありがとうございました。いい勉強をしました。」
やけにかしこまった口調。
それにまた寂しさをかきたてられるのに、気丈に顔を上げて立ち上がる。
「こちらこそ…。」
DH「あなたと仕事が出来て、俺は幸せでした。」
潤ませる瞳はやっぱり伏せられる。
差し出された花束をドンヘの腕からそっと受け取った。
まるでお別れみたいに…
まるで…
あなたと私のお話はここで終わりみたいに…
ありがとうございましたなんて…
幸せでしたなんて…
Aの頬をこぼれていく涙。
カメラが回っているみたいな綺麗な粒が、顔のラインを伝って落ちる。
花束をギュッと抱きしめてAはドンへに頭を下げた。
「………お世話に…なりました……。」
瞼をきつく閉じて涙を落とさないように我慢する。
Aが頭を下げるとは思わなくて少し驚いたドンへ。
小さく震えているAの身体をそっと抱き寄せた。
DH「いつかさ…俺たちが…もっとずっと歳を取ったら…一緒に見よう…。」
俺たちが…
必死に紡いできた…
愛の形を…
耳元でそう囁くドンへにAは小さく何度も頷く。
二人を大きな拍手がいつまでも包んでいた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 98人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「K-POP」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
みき(プロフ) - まだまだ落ち着かないですね。心配でドキドキしてしまいます。(笑)更新ありがとうございました！続き楽しみにしてますね！ (2017年4月5日 22時) (
レス) id: cd9810eca3 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ゆちょみん
| 作者ホームページ：http://ameblo.jp/yuchuming/
作成日時：2017年4月4日 18時
