車の中 ページ29
深夜のソウルの街。
駆け抜けるようにイルは車を走らせる。
やっぱり黙っているだけのA。
暫くして見慣れないマンションの駐車場に止まる車。
エンジンが切られれば、ここが目的地なんだと理解出来た。
「どこ？」
IL「俺の家です。」
「私を送ってくれるんじゃなかったんだ。」
ハンドルにかけていた手。
ギュッとハンドルを握りしめた。
IL「ただ……送り届けるなんて…イヤなんだ…。」
絞り出したような声に顔を向けた。
「旦那の前で嫁をさらおうと思うなんて、あんたもやる事えぐいわね。」
IL「旦那の前で俺の車に乗ったあなたも…じゃないですか？」
どうしてだか分からない…
浮気なんて…
特にしたい訳でもない…
この会話のテンポも…
時々伏せる目も…
私に向ける微笑みも…
私を…
初対面で怒らせた事も…
なんとなく…
出会った頃のドンへに…
似てる気がしたから…
なんて言い訳よね…
「ハッキリ言うところが気に入らないわ…。」
腕が掴まれればアッと言う間に引き寄せられて抱きしめられる。
IL「俺は…もう止まれません…。」
あなたに…
本気になってしまった…
IL「今夜は…うちに泊まりませんか…？」
Aはイルの身体を離すと足を組んだ。
「悪いけど、明日も撮影なの。家に送って。」
IL「無理な相談です……。」
かっさらわれるように重なる唇。
深く奥まで入り込んだ。
この間は欲しそうに身体を撫でていた指先が服の裾から入り込む。
温かい肌を伝うように上がって来た。
首筋にたっぷりと唇の感触を残しながら音を立てる。
IL「俺は別にここでも構わない………。」
助手席のシート。
ゆっくり倒される。
Aはイルの胸に手を当てた。
「がっつき過ぎると獲物を逃すわよ。」
鼻で小さく笑うと扉を開けて車を降りた。
「送ってくれないなら歩いて帰る。」
そう言ってコツコツと歩き出すA。
イルは慌てて運転席から降りてくると細い腕を掴んだ。
IL「どうして？」
「どうして？」
IL「俺と関係を持ってもいいと思ったから車に乗ったんだろ…？」
「………そうね…。」
IL「だったら！」
イルを見上げて小さく笑う。
「気が変わったの。」
IL「え…。」
「それくらいで動揺しないでよ。じゃあね。」
背を見せて手を振りながら歩いて行くAの背中。
イルはただそこで顔を歪めていた。
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みき(プロフ) - まだまだ落ち着かないですね。心配でドキドキしてしまいます。(笑)更新ありがとうございました！続き楽しみにしてますね！ (2017年4月5日 22時) (
レス) id: cd9810eca3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ゆちょみん
| 作者ホームページ：http://ameblo.jp/yuchuming/
作成日時：2017年4月4日 18時
