戻って来た弟 ページ22
シンと静まりかえる宿舎の玄関先で小さな音。
すぐにリビングの扉が開かれると、どたどたと大きな音を立てて、あちこちの扉が開いた。
EH「ドンヘ！！」
辛そうな顔をしてそこに立っているドンヘ。
ウニョクは駆け寄ってドンヘを抱きしめた。
EH「お帰りドンヘ！良かった…帰ってきてくれて…。」
最後は涙声だった。
DH「ごめん…ヒョク…。」
そう言ってドンヘはウニョクを抱きしめ返した。
近づいてくるイトゥクと視線を合わせる。
DH「…ヒョン…。」
イトゥクは険しい顔でドンヘと向きあう。
ウニョクはオロオロした顔でそれを見ていた。
DH「…ごめん…。俺…。」
ドンヘの言葉を遮って、イトゥクは無言でドンヘに殴りかかるようにその腕を首に回すと、ドンヘの体をギュッと抱きしめた。
LT「このバカッ！！！…心配かけて…。」
そういうイトゥクの体が震えて、泣いているのが分かった。
そうやって…
いい兄貴を演じて…
Aの事を聞きたくて仕方無いのに…
俺の為に泣いて…
俺は…
そういう…大人の顔を崩さないヒョンが…
大嫌いだ…
でも…
そういう人間くさいヒョンが…
大好きなんだよ…
ドンヘは涙をたっぷりためてイトゥクの肩に頭をもたげる。
DH「ごめんなさい…心配かけて…。」
やっぱり泣きだしてしまうドンヘを、みんなはホッとした顔で見ていた。
お前は…
叱れないよな…
優しすぎて…
ヒチョルはソファに座って腕を組んで、一人鼻で笑う。
男同士抱き合って泣いている二人。
HC「ドンヘ。Aはどうした。一緒だったんだろ？」
ヒチョルの言葉で、体を離してドンヘはイトゥクを見た。
DH「一人で行けって…。」
その言葉にヒチョルは立ちあがる。
HC「それで、一人で帰したのか？」
ドンヘは俯く。
止められなかったんだ…
もう二度と…
離せなくなってしまいそうだったから…
DH「…今行けば…まだ…間に合う…。」
耳を傾けていなければ聞き取れない程の声。
イトゥクはドンヘの顔を見た。
ごめん…ドンヘ…
やっぱり俺は…
顔を歪めて視線を外すとイトゥクはヒチョルを振り返った。
ヒチョルは腕を組んだまま厳しい顔をしていた。
自分で決めろ…
俺達は結局…
何も出来やしない…
お前の人生だ…
瞳で会話をするようにヒチョルが頭で言葉を投げると、イトゥクは宿舎を飛び出して行った。
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作者名：ゆちょみん
| 作者ホームページ：http://ameblo.jp/yuchuming/
作成日時：2017年1月7日 10時
