胸の痛み ページ3
自分をさらけ出した想いの全てを聞いてしまったドンヘ。
ほんの少し、射していた光を断ち切られたような気分。
目の前でイトゥクの愛をめいっぱい注がれて、抱きしめられているA。
Aの心に伸ばしかけていた手が、すり抜けていく。
俺はいつだって…
迷ってしまうから…
大事なものを…
自分から失ってしまう…
君の想いを受け取ったはずだったのに…
抱きしめておくことすら…
もう出来ない…
失ってから気づく…
この腕の中に…
しまっておきたくて…
気が狂いそうな程…
愛しいはずの…
大切な存在に…
頬に落ちる涙が嫌で、空を見上げる。
それでも後から後から溢れる涙が、音を立てて地面に落ちる。
少しも止まらないのに、何度も無造作に拭った。
ソウルの夜空に、珍しく満点の星空が広がっていた。
自宅の前までAを送ってくる。
玄関先でイトゥクは握っていたAの手を離した。
二人ともすぐに別れの言葉が出なくて、黙って向かい合っていた。
A「…上がって…。」
Aは小さな声を振り絞って微笑むと、イトゥクの腕に軽く手を当てた。
LT「でも…。」
A「コーヒー…入れるから…ね？」
微笑むAにイトゥクは小さく頷いた。
決して大きくないAの家に灯りがともる。
あてもなくフラフラと歩いては、実家に戻ってきたドンヘ。
少し離れた場所からAの部屋に電気がつくのを視界に捉えた。
心の中にたくさんの感情がありすぎて、今自分が何を感じているのか分からなかった。
ただ、強く打っている心臓の鼓動が、とても痛かった。
A「適当に座って。」
部屋に鞄を置くと、ドアノブに手をかけてイトゥクに声をかけた。
LT「うん…ありがと。」
パタパタと足音をさせて一階に下りていくA。
ほのかに感じる甘い匂いを鼻で吸い込む。
大きな白いクマのぬいぐるみがベッドの横で目立っていた。
少ししてビターな香りを漂わせてAが戻ってくる。
小さなテーブルを引っ張り出してカップを二つ乗せた。
LT「A。こっちおいで。」
トレーをテーブルの下に置いてAはイトゥクの隣に座る。
改まって二人になると、どんな話をいつもしていたかすら迷ってしまう。
妙な沈黙の中に、二人の鼓動が微かに聞こえるようだった。
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作者名：ゆちょみん
| 作者ホームページ：http://ameblo.jp/yuchuming/
作成日時：2017年1月7日 10時
