兄として婚約者として ページ20
イトゥクは窓に寄りかかって外に視線を投げる。
LT「怖いよ…。」
怖くて…
ここから逃げ出してしまいたい…
何も…
無かった事にしたいのに…
Aと出会う前に戻りたくないんだ…
EH「そんなに…Aの事が好きなの…？」
辛くて辛くて仕方ないのに、それでもAを強く望むイトゥクに、ウニョクは顔を歪める。
イトゥクは軽く鼻で笑って
LT「好き…？」
そんなレベルじゃない…
気が狂う…
Aのいない人生は…
もう考えられない…
何があっても…
どんな事になっても…
例え…
俺がどうなったとしても…
今まで、優しく弟たちを見守る役目だったイトゥク。
気は多い方だったのに、表だって噂にならなかったからとても地味な印象だった。
大人な顔を崩さないのに、それでも必死にAを捕まえていようとする姿は、ウニョクにはとても辛かった。
LT「だけど…。」
突然声が震えて、窓に映したイトゥクの頬には涙が落ちていた。
LT「Aが…ドンヘがいいというのなら…俺は…。」
俺はやっぱり…
ずるいんだよ…
ドンヘの事が凄く心配なんだ…
なのに…
Aは一人で戻ってきて欲しいと思う気持ち…
ドンへを連れて戻って欲しいと思う気持ち…
ゆらゆらと天秤の上で揺れて…
鳴らない電話に心が切り裂かれそうになる…
かけたいのにかけられない…
ドンヘと一緒だと言われるのが怖い…
どうしても引き寄せきれないAの心。
悔しそうに拳で窓ガラスを叩いた。
額を付けて涙を床に落とす。
LT「笑ってくれよ…ヒョク…。情けない兄貴だと…。みっともないと…笑い飛ばしてくれよ…。」
ウニョクは、泣きじゃくるような声のイトゥクの背中をそっと抱きしめた。
EH「笑わないよ…。」
ヒョンはいつだって…
俺達の…
最高のリーダーで…
俺達を守って…
色んな事に立ちはだかってくれた…
そういうヒョンを…
俺達は知ってる…
だから…
誰も笑わない…
震える肩をしっかり包んで、イトゥクに寄り添った。
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作者名：ゆちょみん
| 作者ホームページ：http://ameblo.jp/yuchuming/
作成日時：2017年1月7日 10時
