手放せない人 ページ2
イトゥクは深い溜息をついて目を伏せる。
LT「知ってたよ…。Aの想いと…ドンヘの想いが…同じ所にある事を…。」
ポツリと呟くような声なのに、静まり返るステージの周囲にやけに響くような気がした。
物陰に隠れて聞いていたドンヘは驚いた顔をした。
Aは立ちあがって顔を歪める。
LT「それでもいいと…自分で勝手に決めた…。」
うまく言葉に出来なくて、Aは何度も首を横に振った。
A「ジョンス…あなた…。」
イトゥクは拳を握りしめて肩を震わせる。
LT「ずるいんだ…俺は…。」
みんなの幸せを願うのに…
君を手放せない…
どうしても諦められない…
ドンヘが心を痛めていると知っていても…
君を奪っていこうとしてる…
Aは思わずイトゥクに駆け寄るようにステージに上がった。
泣きだしてしまいそうなのを我慢しているようなイトゥクに、ゆっくり近づいた。
手を伸ばせば触れられる距離で足を止める。
LT「例え…君が誰を好きでも…俺は…。」
君を愛してる…
君じゃないとダメなんだ…
何年…
何十年かかってもいい…
俺を心から受け入れてくれるまで…
俺はいつまでも待つ…
だから…
LT「…俺の傍に…いて欲しい…。」
いつの間にかボロボロと泣きだしていたイトゥク。
かっこ悪い程涙が頬に落ちて、顔を上げられなかった。
Aは瞳にたっぷり涙をためて、濡れたイトゥクの頬を指で撫でる。
A「バカね……。」
悪いのは私…
あたなの想いを受け取りながら…
フラフラしている私のせい…
イトゥクは頬に添えられたAの手を握る。
LT「A…君は…俺の全てだ…。」
握った手を自分の体に引き寄せて、大きな手でAの小さな顔を包む。
ゆっくり顔を近づけて、その吐息を肌で感じて、イトゥクはAにしっかりとキスを重ねた。
細い腕が服の上を伝って、背中にまわされる。
愛してる…
その想いが喉を焦がして体中に広がる。
あの時ドンヘと交わしたキスとは別の味。
Aに注がれるのを感じると、背中に回していた手に力を入れた。
こんなに…
自分をさらけだして…
かっこ悪い程泣いて…
私だけを真っ直ぐ愛してくれる…
あなたはいつだって少しも迷わない…
それなのに…
私は…
ごめんね…
ちゃんと…
真っすぐ前を見るから…
私の前を…
歩いてくれるあなたの背中だけを…
ちゃんと見ていくから…
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作者名：ゆちょみん
| 作者ホームページ：http://ameblo.jp/yuchuming/
作成日時：2017年1月7日 10時
